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「約束通り、ちゃんと来てくれたんだね。綾芽ちゃん」
テーブルの上には日本酒と魚料理が並び、神矢はすでに軽く飲み始めていた。
「軽めのカクテルでも頼もうか?」
「あの、私は明日お仕事なので、アルコールはあまり……」
綾芽の言うことも聞かず、神矢がすぐに注文を入れ、目の前にはオレンジ色のカクテルが差し出された。
「カンパーイ!」
神矢は自分が飲んでいるお猪口を綾芽のグラスに軽く当て、一気に飲み干した。綾芽も礼儀上、一口飲んでみるが、今日は酔うわけにもいかない。
「嬉しいなぁ。またこうして綾芽ちゃんと再会できて」
「ところで、どうしてこの店にしたんですか?」
「この周辺に出店する予定なんだよ。その手前、色々な店をリサーチしないとだろ? ここは少し高めの店だけど、味と雰囲気は一流だからね~」
リサーチのためとはいえ、わざわざこの店を綾芽と会う場所に指定してくる必要もない。綾芽の表情を見て、神矢が薄笑いを浮かべた。
「職場が近いから、やりづらかったかな?」
「いえ……。私は裏方で働いているので、この店に知り合いはいませんから」
強気で言ってみたものの、あまりここで長居はしたくない。
「ところで綾芽ちゃんってさぁ、いったい、どんな人が好みなの?」
唐突にストレートな質問をされ、飲もうとして持ち上げたグラスを落としそうになった。
「どんなって……」
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