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綾芽がすぐに思い浮かぶ男性は、透也しかいなかった。
でも、それはただ他に好きな相手が現れなかっただけなのかもしれない。もしかすると、これからそんな出会いがあるのかもしれないのだから。
「そうやって悩んでいる顔が可愛いよね」
頬杖をつきながら、綾芽を眺めニヤニヤする。
「からかわないで下さい」
それから一時間ほど過ぎ、神矢の酔いがさっきより酷くなってきた。
「こうやってさぁ、二人で会えたのも何か縁があるっていうことだよ~。お見合いはただの出会いのきっかけでしょ。実際付き合ってみないと、本当の男女は理解できないからさぁ~」
「何が言いたいんですか?」
「少しだけこの辺りを散策して、ホテルに戻ろっかと思っているんだけど~。案内してくれるー? よね~?」
だいぶ酔いが回ってきているのか、問いに対して答えがちぐはぐになってきている。大通り沿いなら人通りもあるし、少しだけ散歩すれば気が済んで、酔いも醒めたところで別れてしまえばいいかもしれない。
店員を呼んで、会計の準備をお願いした。
「綾芽ちゃん、大丈夫、大丈夫。ここは僕に任せておいて~」
「で、でも……」
「いいから、いいから~」
会計を済ませ店を出ると、神矢は千鳥足で一緒にエレベーターへ向かって歩き出す。
「あれ~、少し酔ったかなぁ~」
神矢は足元をふらつかせ、赤ら顔でトロンと虚ろな目つきをして綾芽に近付いてきた。
「ごめ~ん。少し、肩貸してくれる?」
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