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1.突然現れた人
お昼のランチは戦場のように忙しい。
ここは京都にある、アリシアンホテルKYOTOカフェテリアの厨房。
アリシアンホテルは久我咲グループが建てたラグジュアリーホテルの一つで、ジャグジープールやサウナ、フィットネス、エステなど、様々な体験ができる複合型施設だ。
成沢 綾芽はアリシアンKYOTOの社員として、従業員用カフェテリアで栄養士として勤務している。
カフェテリアでは、好きなおかずを自分で選ぶビュッフェスタイル形式で、それが従業員には人気らしい。
綾芽は今年で二十四歳。大学を卒業し、働き出して二年。まだまだ見習いに近い存在だ。そのため、仕事のミスは日常茶飯事。ワイン色のカフェユニフォームとキャップ姿で、今日も忙しく働いている。
「パンナコッタの在庫、足りませんけど……」
パートの女性が困った様子で綾芽に訴えかけてくる。
デザートを出すブースで、数人がトレーを持ったまま行列ができていた。
「えぇっ? 確か、個数を確認して冷蔵庫に入れたはずなのに……」
業務用冷蔵庫を覗くが見当たらず、もしかしてと思い、隣にある冷凍庫の扉を開けてみる。
目の前の棚には、段ボールに書かれたパンナコッタの文字が見えた。
「――まずっ……。やっちゃった」
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