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「時々雑誌で見かけるが、えらい男前やなぁ~。そやけど、成沢が久我咲社長と親しいとは、知らんかった」
いつの間にか隣で腕を組み、山名チーフが感嘆の声を上げている。
「しっ、親しくなんかありません! 父の仕事の関係で知り合いなだけです」
「そうか~? えらい成沢のこと、見つめとったけど」
言われて焦る理由もないのに、顔全体が熱くなってくる。
「成沢は小柄で可愛らしいよって、年上の男に好かれそうや」
「チーフ……!」
綾芽は眉をひそめて山名チーフを睨んだ。
「悪い、悪い。セクハラで訴えんといて~」
ノリが軽くて場を和ませてはくれるが、時々表現が際どくて心配になる。
最近、それを諫めていたボス的存在の女性社員が辞めてしまったから、調子に乗ることが多くなった。
立場の近い栄養士である自分が、なるべくブレーキをかけてはいるけれど。
まさか、透也様がいきなりこんなところへ来るとは思わなかった……。
出社する時間が早かったので、十七時には仕事が終了した。
更衣室でカフェユニフォームを脱ぎ、私服へと着替える。鏡の前に立ち、ゴムで一つにまとめていた髪をほどいた。髪の長さは肩より下10㎝程度の長さはある。最近はヘアーキャップをつけやすいという理由で、伸ばした髪をお団子ヘアにまとめるようになった。
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