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「それとも、一日中ベッドで過ごすのも悪くないな」
透也からの提案に、綾芽は真っ赤になりながら首を何度も横に振った。
「でっ、出掛けます。出掛けたいです!」
今日もマナー講習を頑張らなくてはならない。体を思い切り伸ばすと、ベッドから立ち上がった。
綾芽に気を遣っているせいか、さすがに透也は毎晩求めてはこない。その代わり、せめて同じベッドで寝て欲しいと言われた。
綾芽にとっては、まだ慣れないことも多いけれど、透也と一緒に居られる時間は素直に嬉しい。そして必要とされていることに喜びを感じていた。
数日が過ぎ、楽しみにしていた日曜日はすぐにやってきた。
目を覚ますと目の前には透也の横顔があった。透也はまだ目を閉じている。
朝一番に、大好きな人の顔を見れるなんて、なんて幸せなんだろう……。
鼻筋が通り、瞼を閉じた目尻は、まるで繊細な筆で描いたように綺麗な二重を描いている。思わず見とれてしまうほど素敵だった。
数分後、その美しい瞼がパチッと開き、すぐに綾芽の視線と重なる。
「朝一番に目を開けて綾芽と目が合うとは、今日は良いことでもあるのか?」
綾芽はクスッと笑い声を上げた。
「何がおかしい?」
「私と目が合っただけで、そんな大げさです」
「綾芽の仕事は、俺だけを見ること。そしてずっと俺の傍にいることだ」
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