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「そんなことしたら、透也さんはすぐ私に飽きますよ」
「まさか、綾芽に飽きるわけないだろ」
ちょっとムキになったように答える透也さんの真剣な表情がおかしくって、笑いが止まらなくなる。
「綾芽、今日はどこへ行きたい?」
「それなら、緑が見える場所に行きたいです。できれば芝生がある場所に……」
「もっと豪華なレストランとか、海の上でクルーズとか、遠慮せずに、もっと
贅沢な願いでもいいんだが……。それなら、この辺りだと、海岸近くの浜離宮庭園はどうだ?」
「行ってみたいです!」
透也が呆れた表情を浮かべ、すぐに笑顔になった。
「本当に天然だな、綾芽は」
「変ですか?」
「そういうところが可愛くて、手放せなくなる」
ベッドの中で抱きつかれ、透也が綾芽の身体に密着してきた。体の大きい腕の中へ綾芽はすっぽりと入ってしまうから、抱きしめられるとその心地良さに出られなくなってしまう。
もがいているうちに、ベッドサイドテーブルの上に置かれたスマホが鳴り出した。
「何だ、邪魔が入ったな……」
手を伸ばしスマホを取ると画面を見つめ、すぐに起き上がり、神妙な顔つきになった。
「悪いな、綾芽。急に仕事が入ってしまった」
「私は、また今度連れて行ってもらえばいいので、気にせずに出かけてください」
「済まない」
そう一言残し手早くスーツに着替えると、すぐに出かけて行った。
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