流れる、花筏。

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村の大人たちは、「あの洞窟には近付くな。妖怪に食われるぞ」と、子供に強く伝えていた。 それでも、好奇心を持つ子供が現れた。 そして妖怪の姿を見た。 髪も肌も瞳も自分たちとは色が違い、別の生き物に見えた。口から出る音が言葉か鳴き声かも分からなかった。 ただ、恐怖はなかった。 妖怪は、静かに日の光を浴び、季節の花の匂いを味わっていた。 子供は近くに咲く花を摘み、妖怪に差し出した。すると妖怪は、それを髪飾りとして子供の頭に乗せた。 その日から続いた戯れは、ある日、終わりを迎える。 子供が目にしたのは、髪も肌も瞳も剝ぎ取られた妖怪の遺体。 それが自分たちと同じ人間だと知った。 剥ぎ取られた箇所は見世物小屋に売られ、村の大人たちが金を得ていた。 子供は、その人間を埋葬し、花の咲く木を植えた。 そして大人になる事を拒み、次々と川に身を投げた。 以降、村では子が生まれても川に呼ばれて命を落とす呪いが続き、やがて人はいなくなった。 木が枯れた今でも、川には花筏(はないかだ)が流れる日がある。
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