狐面の少女

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 今年の夏休みもなんだかんだ面白かったなと思った。宿題が終わっていないことを除けばだが、それは今から解決することだ。  駅の方から眼を離して道那智に進もうと思ったのだが、200メートルほど先に真っ黒な人型がいる。人影はゆっくりとこちらに向かって近づいているように見えた。  ー勉強のし過ぎで疲れてるのか?  目をこすってもう一度じっくり見るが、やはり黒い人影道のど真ん中にいる。これは疲れのせいではないかもしれないと思えてきた。  声をかけるのも危なそうだ。いっそ思い切って真横を走り抜けるのがいいかもしれない。シュウは陸上部に所属していて短距離の選手だ。足には自信がある。  意を決して走り出そうとした瞬間、黒い人型が猛スピードで迫ってきた。驚いてバランスを崩しながらも急いで踵を返して高岡通りをひた走った。  きっとコンビニに逃げ込めば大丈夫だと高をくくったのだが、そんな余裕はなかった。シュウが後ろを振り返ると黒い人影がどんどん距離を縮めてきている。少しでも速度を落としたら追いつかれると直感的に感じ取った。  コンビニの前を通りすぎてそのまま小さなスクランブル交差点を通り抜けて津和野大橋までたどり着いたが、すでに息は切れていた。  後ろを振りかえるとすぐそばまで人影が迫っている。あまりの恐ろしさに目を閉じた。やっぱり、コンビニに入ればよかったかもしれないと後悔した。  ー人生終わったかも!  そう思った瞬間、シュウと人影の間に飛び込んできた。  目を開くとシュウより一回り小さな少女が立っていた。左側頭部に狐面をつけていて、長い髪をポニーテールにしている。無地の白い着物に赤の袴。巫女のような装いだ。  
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