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岩場に腰かけて見下ろす私に男が吠える。
「探したぞ、怪鳥の姫騎士よ!」
急所や末端を僅かばかりに守るだけの革の防具と固定式の丸盾を腕につけた、少し痩せ気味の青年が燃える瞳で私を見上げてくる。
「お久しぶりだねえキミ。一年ぶりくらい? どう、今日はなんとかなりそう?」
彼とは長い付き合いだし、ほどよく愛着も湧いてきたので気安く接してあげたというのに彼はご不満だったようだ。
「ぐうう、今日こそは……今日こそは焼き鳥にしてやるぞ! 二度とナメた口をきけないようにしてやるからな!」
「おやおやそれは楽しみ。それじゃいきますよっと」
人族の感性は難しいな。私は背中の翼を広げて舞い上がる。
大魔族“怪鳥公”より生み出されし眷属、我ら“怪鳥の姫騎士”は背中に翼を持ち自在に宙を舞う。地を這うしかできない彼らにはさぞや難敵だろう。
初めて出会ったときの彼は金属製の全身鎧に大剣大盾とそれはもう重装備で私の動きには微塵もついてこられなかった。
縦横無尽に飛び回り手にした短槍で鎧の隙間という隙間をそれこそ鳥が啄む如く突き回してやったら哀れな悲鳴を上げて逃げて行った。
二度目の逢瀬で彼は火炎属性を纏った魔剣を用意して現れた。
可愛らしいことに、それなりに調べて対策を立ててきたらしい。
ちなみに【焼き鳥にしてやる】という人族が“怪鳥の姫騎士”に対して使う俗語の理由である。
元は田舎の島国の郷土料理から来ているらしいが、これにはふたつの意味がある。
私たちは火の属性魔術や攻撃にあまり耐性が無く、羽根の翼も布を重ねた鎧も火の属性魔術などですぐに燃えてしまう。
けれども笑ってしまうね。
鎧も盾も少しは軽くしてきたようだけれども、それで私に対抗できるほど飛んだり跳ねたりできるはずもない。
案の定火のついた剣をむやみに振り回すだけで前回と同じ結果に終わった。
よほど屈辱だったのだろう。二度目は三か月と待たずだったのに三度目までは一年が空いた。
三度目は軽量な革鎧に帯で腕に止められた丸盾。そして弓矢に篝火と来た。
なるほど火矢なら私に届くと踏んだのだろう。でもやはりまだ愚かだね。一年やそこらの修練で当てられるほど私は安い女じゃない。
よく訓練された素人程度の火矢をかわしながら火元の篝火を倒してやると早々に諦めて逃げていった。
そして今日、これが四度目の逢瀬だ。
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