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「え……満室、ですか。」
やはりこの温かい季節にもなれば、世界中を見ても平和なヴィトリン国に人が集まるらしい。
宿提供の店をいくつか回っても、全てが満室だった。頭を抱えそうになった時、受付の人が声を上げる。
「えーっと、ステファン・ラドジーニさん? 明日、生誕の日なんですか?」
頷くと、受付の人がじっと考えた後、大きな声を上げた。
「ロブ! この人のこと、今日泊めてやれないか? 旅人のステファンさん。生誕の日が明日だそうだ。」
「明日!? 確かにそれならうちの方がいいかもな、ちょうどキャンドルが大量に余っているんだ。」
キャンドル? 首を傾げると、受付の奥から来たロブと呼ばれる人が、ニッと笑って手を差し出してきた。
「俺はロベルト・ファンシュレッタ。短くロブとでも呼んでくれ。ステファンは……髪が長いけど、声を聞く限りでは男だよな?」
頷くと、ロベルトが笑顔のまま、肩を軽く叩いてきた。
「ステファン、行くとこないんだろ? うちに泊まりな。明日生誕の日なら猶更だ。」
有無を言わさぬ響きに、頷くことしか出来なかった。
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