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次の日、ぼんやりと朝日を浴びながら、寝具を見つめる。
(何か……凄い歓迎っぷりだった……。)
突然来た自分に出されたのはご馳走、湯船には花が浮かべられ、寝具は干したての一番柔らかい物を使わせてくれた。
突然来た旅人の自分を泊めてくれたのは、ロベルトの家族、ファンシュレッタ家の人々。嫌な顔一つせず、受け止めてくれた。
今日は、自分にとって一番大切な、生誕の日。一日の始まりは、とてもいいものになっていた。
「ステファン! 起きてるか?」
返事をすると、ロベルトが何か白い箱を持って入ってきた。中からはわずかに芳香がする。
蓋を開けると、その香りは一層濃くなった。
「これは……?」
「香り付きのキャンドルだ。これを、今日は家中に置くぞ。この部屋に置くなら、どの香りがいい?」
家中? と首を傾げながら、石鹸の香りがするものを選び、指定された窓際に置く。
ロベルトが火をつけると、たちまち部屋が石鹸の香りでいっぱいになった。
「よし! 今日は、しばらくここで過ごしてくれ。呼ぶまで、階下には来ないようにな。」
頷くと、また後でな、と笑ったロベルトが、部屋を出ていった。
(何なんだ……一体……。)
生誕の日なのに、外に出られない。その事実にまた首を傾げながらも、とりあえず着替えるか、と寝具から出ることにした。
外からは、鳥の声が聞こえていた。
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