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翌日の彼女はいつもの彼女に戻っていた。少し私を避けているようにも見えた。
そして
その頃からミヤコは学校を休みがちになった。
何度も見舞いに行ったがミヤコには会わせて貰えなかった。
学年の変わる春休みに、ミヤコが白血病で亡くなった事を聞かされた。
葬儀に訪れた私を彼女の母親が、泣きながら出迎えてくれた。
「しょう太くん、ありがとう。ミヤコも本当は会いたがってたのよ。だけど、元気な自分を憶えておいて欲しいって…ごめんなさいね。」
その時私は不意に号泣した。自分の中のとても大切な物が崩れてしまったような気がして…
さて、
そろそろ帰ってやる事がある。
私はチャイにリードを付け直し、砂浜近くの我が家に戻った。
この屋敷に来てから始めた趣味がある。
モザイク画だ。
子供の頃は絵描きになりたかった。
セメントと砂に水を加え、硬めのモルタルを作り、木枠に少し敷き詰めては、気に入った粒石やガラスの欠片を貼り付ける。時間をかけてゆっくり祈るように貼り付ける。素人でも時間を掛ければ、それなりに素晴らしいものが出来るものだ。
画面の右側は幼いバレリーナ、ミヤコだ。画面の右側には最愛の妻、あけみ。真ん中は私。
あけみは怒るだろうか?
いや、あけみは怒ったりしない。
さあ、あとワンピースで完成だ。
うん。いい。
あれ?息ができない!
私はその場に崩れ落ちた…
「あなた、大丈夫?」
「あけみ!」
「しょう太くん!ほら起きなさい!」
「ミヤコちゃん!」
「え?あけみとミヤコちゃんが一緒にいるなんて、こんな贅沢な思いしていいの?あけみ!怒ってない?」
「何言ってるんですか、あなた。」
あけみは笑っている。
「いいんだよ。しょう太くん。人は死んだら愛だけが残るの。」
「愛だけ?」
「そうだよ。しょう太くん。肉体も魂もいずれ消えるんだけど、人は死んだら、愛だけが残るんだよ。」
「あ、うん。」
二人が私の手を優しく握る。
〜 完 〜
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