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騙されてる王子
私は1年前までパン屋で働いていた、デイジー・シャーレ。
「迎えにきた。」
迎えに来たって何?
…この人は伯爵の友人?
「グレースも後半年すれば18才だ。そろそろ俺のもとへ来てくれないか。」
…半年?
「今まで会えもしなかったんだから。」
何を言ってるんだろ。
「やっぱり、絵より実物の方が…その…綺麗だな。」
「…っ」
綺麗っ!?どういう事っ!?絵よりって、この人は私の絵を見たことがあるの?
パラリと机に置かれたそれは私の姿絵…。
「他にも…送られてきてた肖像画より色も白いな。」
何故そんな物を持っているの?伯爵のお友達が。
「喋れないのは気にする事はない。手紙のやり取りだけでも十分だ。」
「……」
手紙?
机の上にのせられた手紙は私の書いたもの。なぜこの人がもってるの!?
「さぁ、約束だ。一緒に来てくれ。」
っちょっとまってーー!!私はデイジーでグレース様じゃありません!!もしかして領主様のお嬢様と勘違いしてませんかっ!!
って言いたい!!けど、喋ったら怒られる!
伯爵様にもこの友人にも逆らったら駄目だ。この領土にすまわせて貰えなくなるかもしれないし。
コクンと頷くと、彼はとても綺麗な顔をして笑った。
どうしよう……
伯爵を見ても助けてくれる様子はなくて、私はそのまま、どこかへ連行された。
けど、貧乏な私はさからえないのでした。
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