貴女が苦手です。

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「あらあら、気をつけないと駄目じゃない。」 と、清んだ声の主は傾いてしまった私の眼鏡を綺麗に整えてくれた。 「ごめんね~、麻美ちゃん。 怪我はなかったかしら?」 「いいえ、おば様。大丈夫よ。」 ニッコリとお母さんに微笑むこの人は、私の幼なじみで同い年のお隣さん麻美だ。 私は大慌てで麻美から離れ、落としてしまった鞄を拾い上げると、ジト目で麻美を見つめた。 単刀直入に言おう。 私は、麻美の事が苦手だ。 「ん?私の顔に何か付いてる?」 「いや、別に……。」 首を傾げて問う麻美に対し、私は愛想悪く顔を背けた。 「あら、未来ちゃんおはよう。」 「おはようございます。理恵おばさん。」 やって来たのは、未来のお母さん。 「おはよう理恵~!朝の準備終わったの?」 「さっき終わったところよ。 新作パンを作ってみたんだけど、試食してくれないかしら?蘭の意見が聞きたいわ。」 「食べるに決まってるじゃなぁ~いっ! 理恵の作るパンだから、絶対美味しいって決まってるけどねっ♪」 私のお母さん蘭と麻美のお母さん理恵おばちさんは、大大大大大親友だ。 きっかけは高校生の時、入学早々お母さんがお昼ご飯を持って行くのを忘れてしまい、その時理恵おばさんが手作りのパンを分けてくれた事と、偶然名字が《野間口》と同じだったからだそうだ。 パワフルで感情が天気の様にころころ変わるお母さんと、穏やかな理恵おばさんが何故こんなに仲良しになったのか、正直不思議でしかない。 でも二人の絆は強く、年に1回は必ず2人だけで旅行へ行くし、毎朝お母さんは理恵おばさんが経営しているパン屋へ足を運んでイートインスペースで優雅な朝食をし、挙げ句の果てには家を隣同士に建ててしまった程だ。 豪華な我が家の隣には、素朴な理恵おばさんのパン屋兼住まいがある。 .
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