32人が本棚に入れています
本棚に追加
「未来、離れて。」
角を曲がるなりそう言うと、麻美は一緒に組んでいた腕を引っこ抜き私を置いて先を歩き始めた。
そして、長い黒髪を片手で軽く払い風になびかせると
「勝手に腕を組まないでくれない?」
と、淡々とした表情で言いはなった。
「はいはい、ごめんなさいね。」
「返事は1回にして。」
クルッと方向転換をして、更に先を歩いて行く麻美の態度に、私は苛々が一気に溜まった。
そう、麻美の性格は難有りなのだ。
麻美は自分の見せ方を知っている。
周りには、穏やかで優しいお姫様の様な振る舞いをとっているが、私と2人きりになるとお姫様ではなく、ワガママ放題・言いたい放題の女王様へと隠していた本性を露にするのだ。
私が麻美の事が苦手な原因はこれっ!
この女王様気質に何度振り回された事か……。
自分の思い通りにならないと癇癪を起こすし、これでもかと圧をかけてきて毎回私が折れてしまう。
そしてそれだけではない。
「ぶわっ!ぺっ!何!!?」
急に煙とフローラルな匂い襲われ、私は思わず咳き込んだ。
見ると少し先で、麻美が制汗剤を全力で吹きかけていた。
しかも、私と組んでいた腕と、躓いた際にぶつかった所を念入りに。
「ちょっと!私にもかかってるっ!!」
「あら、私のせいじゃないわよ。
風下にいる未来の落ち度じゃない。」
見下した様な笑み。
この瞬間、私の苛々はMAXになった。
女王様の様な気質に加え、こうやって何かある事に私を馬鹿にして笑ってくる。
そんなに、私に触られたくなかったか!!?
と、言ってやりたかったけど、私は麻美と違い大人だからグッと言葉を飲み込んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!