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どこへだって行ける気がして、思い切って海域の境界にある海に突き出した
岩壁を超えた時、満天の星よりも眩い、大きな船が濃紺の海に浮かぶのを見つ
けた。すぐに海の底に隠れるべきだった。けれど私はそのまぶしさに引き付け
られ、船の上にいる一人の人間を見てしまうと目が離せなくなってしまった。
船はあたしの横を通り過ぎて行き、その後の大きな波に揺られて、再び訪れた
静寂にようやく気がついた私にはどうしていいのかわからない感情が自分の中
にあることに気づいて、慌てて海の底に戻った。海の上でのことを振り切るよ
うに必死に尾ひれを動かして。
それからもあたしはあの夜のことが忘れられずに、夜中にこっそりと抜け出
しては崖の裏へ向かった。15の誕生日を迎えて海の上に出ることを忍ぶ必要
がなくなってからは毎夜のように船を待った。船の上のあの人を。
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