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ヤンデレの告白①
*
キス画像を映したスマホが文博くんの手から落ち、ベッドの上へぼすんと落ちる。
それから一分か二分か三分か――ずいぶん長く感じられた沈黙の後、彼は何か言いたそうに数回、声を出さずに口を開いたり閉じたりした。
出来もしない読唇術を試みる僕が文博くんの唇をガン見していると、彼はその赤い唇を噛んでくしゃりと顔を歪めた。
そしてらしくなく、震える声で言った。
「理由なんてそんなの……そんなのひとつしかねぇだろうがっ……!
俺が、お前を好きだから以外に理由なんてあるかよ!」
僕は無意識に呼吸を止め、めいっぱい目を見開いた。
幼馴染みは今、何と言った?
聞き間違いじゃなかったら、僕のことを『好き』、なんて血迷ったことを言わなかった?
気がつかないうちに発情促進剤打たれて発情し、理性を失った僕の脳が現実をねじ曲げ、己に都合がいい幻覚幻聴を見せているのか?
だってあの円城文博がこの僕を好きだなんて……絶対あり得ないことだ。
「健嗣のことが、小学生の時から好きなんだ。
ずっと昔のガキのころから、俺はお前に片想いしてんだよ……!」
泣き出しそうな表情で、また彼が言う。
僕のことを好きだと。
しかも小学生のころから片想いしていたと。
……やはりこれは狂った脳が見せているまぼろしだ。
小学生のころから幼馴染みに片想いしているのは、僕。
まぼろしでないというのなら、きっと罠。
「文博くんが僕を……?!
君、保育園の時から女の子の恋人がいたのに?
――分かった、何かの罰ゲームで言ってるんだろ? たちの悪い冗談で非モテをからかうのやめてよ」
返事をする僕の声も震えていた。
こっちは本気で君を好きなんだ。ぬか喜びさせないで。僕の恋心をもてあそばないで。
馬鹿正直に「僕も文博くんのことが好き!」と答えた後、「バーカ! 男のお前を好きとかねぇから。嘘に決まってるだろ」と、ネタバレされてはたまらない。
そんなことになったら一ヶ月は部屋に引きこもって泣き暮らすし、大学辞めて旅に出て、二度と今いる土地には戻らない。
「からかってなんてねぇし!
ガチ恋でマジ惚れしてなきゃ、発情促進剤なんてヤベー薬まで持ち出さねぇよ!
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