どうしてこうなった?

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どうしてこうなった?

何故今僕は幼馴染みのチャラ男により、ベッドに押し倒されているのだろう? どうして彼は僕の腰の上に乗り、僕の両手首を頭上でまとめ、ガムテープでぐるぐる巻きにしてしまったのだろう? 「よぉ健嗣(けんじ)! お前も今帰り? ――あ、そうだ、お前に言わなくちゃなこと思い出した。 お前ってばまた『ファモキスカード』集めだした、と前に言ってたよな? 俺が昔集めてたのをこないだ見つけたんだけど、もしソレいるなら、これから俺ん家まで取りに来いよ」 お互いにもうすぐ大学三年生になる年度末の三月上旬、今から約三十分くらい前の二十一時少し前。 自宅最寄り駅の階段を下りようとしていた僕に、幼馴染みの円城文博(えんじょうふみひろ)が背後からこう声をかけてきて、彼の自宅に誘われた。 『ファモキスカード』というのは、『ファイモンキングスターカード』の略で、トレーディングカードゲーム用のカードのことだ。 小学二年の時に学校中で流行り、僕はそれを中一まで集めていたのだが、中二でアイドルアニメにハマって収集をやめた。 しかし最近再燃してまた集めるようになり、初期のレアカードがもらえる! と、ウキウキしながら文博くん家にお邪魔し――どうして僕は今、彼に組み敷かれているのか? 彼は僕をつれて彼の部屋へ入るなり、サッカーとフットサルで鍛えた身体能力を遺憾なく発揮し、あっという間に僕をマウントポジションにおいた。 「そんじゃぁ、はじめますか」 「何を?」と僕が口をきくより早く、彼は事態が飲み込めないでいる僕の上着を、力任せに引っ張り上げた。 「な、何するの?! 寒いよ!」 偶然丈が長いものを着ていたおかげで、腹筋が割れていない僕の腹は丸だしになることなく、五センチ露出したくらいの被害。 だけれど、エアコンのスイッチが押されていない三月の夜の気温は、素肌にはひやりと冷たく。 五センチの隙間からの肌寒い空気の侵入に、僕は幼馴染みという重りを乗せたまま、ぶるりと身体を震わせた。 「文博くん、どういうこと? 今この状況、全然意味分かんないんだけど? 何がしたいの?」
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