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「疲れているのよ。ママ。今日の夕飯はピザのデリバリーでいいからゆっくり休んでいて」
父のデビッドは不動産会社で働いている。帰りはいつも七時くらいだ。父も疲れて帰ってくるが夕飯がデリバリーでも文句は言わないだろう。
アシュリーは母を片手で抱き寄せて腕を摩った。
「愛しているわ、ママ。卒業式のホームパーティーもやらなくてもいいのよ」
「おお、アシュリー、でも、それは私の最大の楽しみなの」
楽しみならそれを奪う権利はアシュリーにない。ジュシアは気丈に言った。
「大丈夫よ。十インチのピザを食べればWWEのレスラーだってやっつけられるわ。ありがとうアシュリー」
七時になって父のデビッドが帰って来た。アシュリーとジュシアは幽霊の話をデビッドに内緒にすると決めていた。下手に心配させるのはよくない。デビッドは心配症だ。ジュシアが風邪をひいたときなどは二日間も会社を休んだ。
夕飯のピザを食べながらデビッドが言う。
「明後日の土曜日、みんなで大型スーパーに行こう。卒業パーティーに必要なものを買ったほうがいいだろう?」
ジュシアは微笑む。ホームパーティーにはジュシアの妹も来るし中学生になる妹の娘も来る。隣に住む三十代の夫婦も呼んでいる。買い出しをしておかなければ冷蔵庫の中のものだけでは足りない。
「そうね。チキンナゲットとポテトフライ、サンドイッチとケーキの材料。お菓子とジュース、大人にはビールやワインも買わなくちゃ。それとバルーンね」
バルーンはたくさんあった方がいい。このシーズンだから大型スーパーには色々な種類のものが売っているだろう。アシュリーはピザをよく咀嚼して飲み込んでから言った。
「ウィリアムもアップルパイを持って来るの」
「それは楽しいパーティーになりそうだ。ウィリアムは大学に進んでもラグビーは続けるのかな?」
「ええ、ワールドカップに出たいんですって」
デビッドは満足そうに頷いて紙ナプキンで口を拭いた。
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