36人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「なにかあったら電話してくれよ。幽霊じゃ911も対応してくれないだろう」
「ええ、ありがとう。ウィリアム」
ジュシアはベッドに入ったがなかなか眠れなかった。精神安定剤を飲むことも考えたが、本格的に眠ってしまうのは困る。ディナーの準備も必要だし洗った布団カバーやシーツも取り替えなければいけない。
ベッドで震えていると玄関のほうから物音がした。時計を見ると五時。アシュリーが帰ってきたのに違いない。ジュシアは起き上がる。
「アシュリー?アシュリーなの?」
返事がない。聞こえなかったのだろうか。寝室からでる。ミシッ、ミシッ。誰かが階段を上ってくる音がする。
「アシュリー?アシュリーでしょ?」
ジュシアは階段のほうに呼びかけた。ミシッ、ミシッ。段々と音が近づいてくる。怖さで固まっていると黒髪の女性の顔が見えた。ジュシアは失神しそうになった。そのとき本当にアシュリーが帰って来た。玄関から元気のいい声が聞こえる。
「ママ、帰ってきたわ」
「アシュリー、助けて。私は二階よ」
アシュリーはただならぬ事態を感じて急いで二階に上る。母は真っ青な顔をして廊下に座りこんでいた。
「ママ、どうしたの? 大丈夫?」
「また幽霊を見たの。昨日と同じ人。精神科が必要かしら?」
「幻覚を見る人は大抵、虫とか蝶を見るものよ。でも軽い精神安定剤は必要かもね。手が震えている」
アシュリーは母を抱きしめた。こんな母を見るのは初めてだ。よっぽど怖かったのだろう。父にも相談して解決方法を考えなければいけない。
最初のコメントを投稿しよう!