番外編① ドキドキっ☆ロシアンルーレット

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番外編① ドキドキっ☆ロシアンルーレット

 これは帰宅部メンバーでショッピングモールに出かけた時の話だ。  俺達は服屋、ゲーセンと堪能し、さらに大型施設のショッピングモール内を長時間歩き回った事が合わさってお腹が空いてきたところだった。  そこで施設内にあるフードコートへと足を運び、何を食べるか決めることに。  フードコートに着くと、中はたくさんの人達でにぎわっていた。  家族連れに制服姿の学生達、オシャレに服を着こなしている女子の集団、男女カップルなどなど。  みんなそれぞれ中央に設置されているテーブル席に着いて、食事を交わしながら楽しそうに談笑している。  そんな人集りを見て、俺達は呆然とするしかない。 「うわっ、めちゃくちゃく混んでるな……」 「そうね。休日だから仕方ないと思うけど」 「これだけの人だと、席は空いていないかな?」 「あ、あそこの人達そろそろ移動するみたいだよ」  黒崎が向けた視線に目を向けてみれば、四人用テーブル席に座っている女性二人が鞄を肩にかけ、トレーを手にし始めていることから席が空くことが分かる。  俺達はそのタイミングを逃さず、入れ替わるよにして席を確保することに成功した。  俺の隣に神林、目の前にアリア、その隣が黒崎という座位置だ。  他の人に席を取られなかった事に安心した俺達は、早速何を食べるのか話し合う。 「みんなは何食べるのか決まっているのか?」 「悩ましいわね。これだけお店が多いと……」  アリアがぐるりと首を動かしながらお店を流し見する。黒崎も神林も同意見なのか、同じように流し見した。  確かに、中心に設置された席を囲むように建てられたお店の数は多い。  メインになりそうなハンバーガー屋、うどん屋、ラーメン屋、ステーキ屋、たこ焼き屋の他に、デザートの部類であるドーナツ屋、クレープ屋、アイスクリーム屋などがある。  普段フードコートに足を運ぶことはない俺はなおさらに迷ってしまう。  すると何かに目を付けたのか、黒崎が言い出す。 「みんなはたこ焼きなんか好き?」  どうやら黒崎はたこ焼き屋に興味を持ったらしく、みんなで食べたいのか、そんな質問をし始める。  俺もアリアも神林も、たこ焼きは好きなのでうなずく。 「じゃあみんなで食べよう。ちょっと買ってくるね」  好き嫌いの確認をとれた黒崎は、財布だけを持って一人で買いに行った。  特にたこ焼きを食べたくないわけではないので、ひとまず流れに任せることに。  黒崎が買いに行っている間に俺は全員のお冷やを取ってきて、黒崎が来るのを待つことにした。 ––––––10分後。 「お待たせ〜」  黒崎が舟形の皿に乗せた四個入りのたこ焼きを持ってきた。たこ焼きの上にはソース、マヨネーズ、かつお節がかかっている。青のりは歯にくっつくのを気づかってか、かかっていない。  また出来立てなのか、たこ焼きは見るからにこんがりと焼けていて、その上ではかつお節が熱によってくねくねと踊っていた。  そんな美味しそうなたこ焼きに目を輝かせる俺達を他所に、黒崎がとんでもない事を言い出した。 「実はこの中に一個だけ、からしがたっぷりと含まれた激辛がありまーす!」 「「「え!?」」」  一斉に黒崎へと視線を向ける俺たち。まだ続きのセリフがありそうなので、今は黙って聞き役に徹する。 「ここのたこ焼き屋は遊び心を兼ねた商品も売っているらしくてね。組み合わせも自由だったから、スタンダードの中に一個だけハズレを混ぜてみました」  テヘッとわざとらしくドジっ子ポーズを取る黒崎だが、ドジもなにも意図的だろというツッコミはこの際しないでおく。  それにしても、たこ焼きは四個しかないから必然的に誰かがハズレを引くことになるわけか。黒崎のことだから思いつきで始めたのだろうが、それは自分にも災難が降り注いでくる可能性があるということ。  しかし黒崎はそんなことを一切気にしていない様子で、さらに話を続けた。 「ただやるだけじゃつまらないから、からしを食べた人には罰ゲームとして、『好きな人の名前』をこの場で宣言してもらいまーす!」 (な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?) (な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇ!?) (ふぇっ!? す、好きな、ひと!?) 「名付けて、『ドキドキっ☆ロシアンルーレット』だよ!」  人差し指をピーンと立て、楽しそうにゲーム名を言い出す黒崎。   俺達の内心の叫びは当然伝わらない。  ご丁寧につまようじ4本が全てのたこ焼きに刺さっているのはこのためか。 「あ、ちなみにここでいう『好きな人』というのは友達とか家族とか、そういうやつじゃなくて、『異性として好きな人』を指しているからそこだけ注意してね」  なぜかやる前提で話が進んでいるが、もう止めるタイミングを失って誰も歯止めすることはない。  だがここで、神林が遠慮がちに手をあげた。 「あのっ、もし本当に好きな人がいない場合はどうすればいいかな?」 「その時はクラスメイトで一番タイプの人をあげればいいと思うよ。私達クラスメイトだから分かりやすいしね」 「わ、分かった!」  てっきり止めに入るのかと期待していたが、まさかのルールについての質問だった。  これにより、もはややらざるを得ない空気になってしまっている。  だが、まだ望みはある。アリアならきっとこんなプライバシーに関わる勝負を反対するに決まっている。ちなみに俺は臆病者だから言い出すことができないだけだ。  俺はアリアの方へとチラッと視線を向け、このゲームを止めるよう訴える。  しかし、アリアは俺の視線など気付いておらず、何やら顎に手を添え考えている様子。 (もしここで林くんがからしを引いた場合、好きな女性が誰なのか分かるのよね……)  考えがまとまったのか、アリアが姿勢を正して意を決した強い瞳を見せる。よし、そのままガツンと言ってやれ! 「やりましょう!」 (なんでだよおおおおおぉぉぉ!! お前こういうのやりたがらないタイプだろぉ!? なんで断らないんだよ!)  もちろん俺の心の訴えなど届くことはない。そして俺は思い返す。 (そうだった。アリアは勝負事になると燃えるようなやつだった……)  アリアが断らない原因を知った俺は肩をがっくりと下げて断念することに。 「順番はどうするのかしら?」 「公平性を保つために私は最後でいいよ。あとは三人でジャンケンでもして決めたらどうかな?」  購入してきた黒崎ならどれがからし入りなのか知っていてもおかしくない。  黒崎の提案通り、俺達三人はジャンケンをして順番を決める。  結果的に、神林、林、アリア、黒崎の順番で決まった。 「じゃあ、僕からだね……」  緊張を隠しきれないでいる神林。顔に不安の色を浮かべながらどのたこ焼きにするか慎重に選んでいる様子。  どれも同じようなたこ焼きにしか見えないが、もしかしたらわずかの違いがあるのかもしれない。  それを見つけ出すために神林はここまで慎重になっているのだろうが、何度見ようとも違いという違いを見つけることは出来なかった。 「これにするね……」  どのたこ焼きにするのか決まった神林は、たこ焼きに刺さっているつまようじを持ち上げ、一度唾をゴクリと鳴らした後に覚悟を決めて口の中へと入れた。 「…………」  ゆっくりと咀嚼する神林。果たして結果は……。 「おいしい!」  セーフだった。これで神林が罰ゲームを受けることはなくなった。くそッ! 神林の好きな男性を知れるチャンスだったのに!(泣)  だからといって辛い想いをさせるのも可愛いそうなので、これはこれで良かったのかもと納得する俺だった。 「次は俺の番だな……」  神林同様に、俺もどのたこ焼きにするか慎重に選ぶ。  すると、前方から邪悪なオーラを感じたので目を向けてみると……。 (からしからしからしからしからしからしからしからしからしからしからし)  ……たこ焼きを睨みつけながら眉間にシワを寄せ、両手を合わせているアリアが。  神頼みをしているような姿から、俺がからしを引くのを強く願っているように感じた。いや、絶対そう願っている。  アリアの期待を裏切ってやるためにも、ここは何がなんでも回避しなければ! 「……これにする」  だがやはり、たこ焼きに見分けがつかない以上、運に頼るしかないこのゲーム。  俺は自分の直感を信じて、口の中へと放り込んだ。  からしによる恐怖を感じつつも、ゆっくりと咀嚼をする。 「……うっ、うまい!」  セーフだった。見事、アリアの期待を裏切ってやることに成功したのだ。ハッハッハ! 残念だったなアリア! 「……」  ジト目でこちらを見つめてくるアリア。こちらの心が漏れてしまったのだろうか。圧のある無表情からはスカウターがぶっ壊れるほどの高い戦闘力を感じ取れた。あとで手刀の一発は覚悟しといた方がいいだろう……。(汗)  続いて残るのはアリアと黒崎。  この二人のどちらかが罰ゲーム確定となる。罰ゲームを回避した俺と神林は気が楽になり高みの見物状態ではあるが、二人にとっては緊張感あふれる最悪な状況と言えよう。  罰ゲームになる確率は50%。しかも見た目に判別ができない為、運任せの一騎討ちとなる。  どちらが勝つのか勝負を見届ける形となった俺と神林にも緊張が伝ってくる。 「ねぇ赤坂さん。どうせなら、せーので同時に食べない?」  黒崎がそんな提案をする。おそらくこの案は、よりゲームを楽しむためだろう。  仮に赤坂がセーフだった場合、口にしなくとも黒崎がからし入りだということが確定となってしまう。それではエンターテイメント性が薄れてしまうだろう。  それなら二人同時にたこ焼きを食べ、二人の反応を探りながらどちらがからし入りなのかを観察した方が場は盛り上がる。 「ええ、いいわよ。同時に食べましょ」  アリアも黒崎の言っている意味を理解したのか、すんなりと受け入れた。  もちろん、どちらのたこ焼きを選ぶのかはアリアが先で、残った方が黒崎のものとなる。  アリアは自分の直感を信じたのか、迷うことなくたこ焼きを選び、つまようじを手にした。  その後、残ったたこ焼きを黒崎が同じように手にする。  これで両者の運命が決まった。  どちらかが、からしがたっぷりと入ったたこ焼き。すなわち罰ゲームを受ける。  全員が、固唾を飲んだ。  今フードコートではたくさんの人達で賑わっているはずなのに、この場だけ空間を切り取られたかのように静かに感じた。  アリアと黒崎が視線を交わす。 「覚悟はいい?」 「ええ」 「じゃあいくよ。––––––せーのっ!」  ぱくっ。 「…………」 「…………」  二人は味をよく確かめるように、ゆっくりと咀嚼する。  俺と神林も二人の表情を見ながら、どちらがからし入りなのかを観察していた。  だが現時点で、二人の表情に変化は現れなかった。  そんな時、咀嚼したものを飲み込んだ黒崎が声をあげた。 「美味しい! 私のはからしが入ってなかったよ」 「えっ? じゃあ、からし入りは……」  当然、全員の視線がアリアへと向けられる。  しかし、アリアの表情はさっきと変わらずだった。  アリアはまだ口をもぐもぐとしながらたこ焼きの味を堪能している様子。 全員に注目されながら食べるのに居心地が悪かったのか、口を手で覆いながら結果だけを告げる。 「私のも、からしが入っていなかった、わ……」  語尾に近づくにつれて声のボリュームが小さくなり、最後歯切れが悪かったのを俺は聞き逃さなかった。 だが神林と黒崎は気が緩んでしまったのか、その些細な違和感に気付かない。 「あれ? みんな辛くないの?」  黒崎が不思議な様子で俺達にも問う。 「俺は辛くなかったぞ」 「僕も」 「えーっ!? お店の人にちゃんと頼んだのになぁ……」  かなりがっかりの様子の黒崎。それだけ今回のロシアンルーレットに期待を寄せていたのだろう。  俺はその気持ちに同情してしまい、思わずアリアの方へと視線を向ける。  向こうも俺の視線に気づいて目が合ったので、俺は疑惑の目だけでメッセージを伝えた。 『お前、からし入りだったろ?』  アリアの目尻には薄らと涙が浮かび上がっていて、今は口を硬く結んでおり、顔も赤く染まっている。  どれもこれも、全てからしによる影響であることは明白。  すると、アリアからすねを蹴られた。  痛みに耐えながら再びアリアに向き合うと、そこには天に立つ者としてふさわしいほどの霊圧を放つ霊王が。 『言ったら……分かってるわよね?』 『もちろんです!! アリア様!!』  心なしか、ゴゴゴッと地が揺れる音が聞こえる。一体いつから、アリアが死神じゃないと錯覚していた? アリアは日本人とロシア人と死神のスリーハーフなのだ。なんだスリーハーフって……。  ひとまずアリアの気を落ち着かせるためにも、俺は水の入ったコップを持ち上げる。 『とりあえず水を飲め』というメッセージだ。  それを見て気づいたアリアは、『そ、そうだったわ』といった感じで慌ててコップを手にし、水で一気に流し込んだ。  そのおかげか、険しかった顔も徐々に落ち着つきを取り戻したような感じがして、内心ホッとした俺。  水の存在を忘れてしまうほど辛さに襲われて、内心パニックに陥っていたのだろう。  自分がからし入りを引くとは思っておらず、しかも罰ゲームで好きな異性をこの場で打ち明けないといけない運命に立たされてしまったのだから。 「なんだかしらけちゃったね。ごめんね? 私、あそこのラーメン屋行ってくるね」 「あっ、僕もそれにしようと思ってたんだ! 一緒に行こ?」 「もちろん。二人は何にするか決まった?」 「いや、俺はまだ決まってない」 「私も」 「そっか。じゃあ私達先に買ってきちゃうね」 「おう。いってらっしゃい」  財布だけ持って、黒崎と神林はラーメン屋へと向かった。  荷物を見張るためにも、二人が戻ってくるまで待機しておくのがいいだろう。  俺も何を食べるかそろそろ決めようとした時、前に座るアリアから話しかけられる。 「……さっきは、ありがとう」  いきなり感謝の言葉を告げられたもんだから、なんのことや? と思った俺だったが、すぐにロシアンルーレットの件かということに行き着く。 「いや、別にお礼なんて。でもよかったな、二人にはバレなくて」 「そんなに、顔に出ていた?」 「ああ。だいぶ出ていたぞ。あんなに面白い顔をするアリアなんて初めて見たわ。大仏の顔といい勝負だったんじゃないか?(笑)」  今思い出すと、アリアと大仏が同じ顔をしながら隣合わせで座っているイメージが湧き上がってきて、ツボりそうになる俺だったが必死に堪える。 「林クン? 正常に美味しくご飯を食べるのと、痛みを味わいながら苦しく食べるの、どちらが好みかしら?」 「正常に美味しくご飯を食べる方です。はい……」  アリアが切れ味良さそうな手刀を見せつけながら脅迫の質問をしてくる。もう手刀のアリアと名付けようかしら。緋弾にも太刀打ちできそうだし。 「でも……そうね。本来ならルール上、私は罰ゲームを受けるのよね」  アリアがため息をつきながらそう言う。 「まぁ、別に良いんじゃないか? 誰も気づいてないし、店員がからし入りのたこ焼きを作り忘れたってことにすれば大丈夫だろ」  黒崎と神林もそう納得している感じだったしな。  それでもアリアはどこか納得していない様子だった。  おそらく、アリアのポリシーに反しているからかもしれない。  アリアは真面目で、勝負のことになれば正々堂々と立ち向かう。良くも悪くも、決められた条件を己の判断で同意したことになると、それをきっちり守り通そうとする責任感というものが強い。  だからアリアは、自分が罰ゲームを受けないで逃避行為をすることに納得できていないのかもしれない。  しかし罰ゲームの内容が内容であるため、避けられるのなら避けたいという矛盾も発生してしまっている。  その矛盾をどう解決したらいいのか、アリアはそれに悩まされているのだ。 「…………教えてあげる」  そんな解決方法を思いついたのか、アリアは覚悟を決めた様子で俺の瞳を捉える。 「え?」 「あなたにだけ……教えてあげるって、言ったのよ……」  からしの余韻が残っているのか、顔はまだ赤い。 「私の異変に気づいたのはあなただけだったし……あなたにだけ教えてあげれば、問題ないでしょ?」  俺としては無理に罰を負う必要はないと思うのだが、それだとアリアの気が晴れないのかもしれない。  だからその気持ちを否定しないように、俺は受け入れた。 「まぁ、そうかもな」 「じゃあ、言うわね。……私の、好きな人は……」  目をあちこちと泳がせ、落ち着かない様子のアリア。  そんな自分を落ち着かせるように一度大きく深呼吸をした後、柔和な笑みを浮かべてから告げた。 「––––––林くん、あなたよ」 「え––––––?」  この時俺は、泣く子も黙るほどに間抜けな顔をしていたと思う。  まさか自分の名前が挙げられるなんてこれっぽっちも思っていなかったから。  そんな俺の顔を3秒ほど見つめたアリアは先程の柔和な笑みから一変、今度はからかうようないたずらな笑みに変え始めた。 「って、言ったらどうする?」 「おい、マジで心臓に悪いからやめてくれ……」 「ふふ〜ん♪」  ドッキリ大成功と言わんばかりに嬉しそうな笑みを浮かべるアリア。  学園生活と同じように、からかわれるのがオチというのは頭の中で理解しているつもりだが、実際に言われると期待してしまう自分がいる。からかい上手のアリアさんかよ。  だがこれも、女性との経験値が足りなすぎるがゆえの問題でもある。  小さい頃からもっと多くの人達と交流を深めていたら、それなりに耐性はついていたのかもしれない。 「お待たせ〜……ってあれ? 二人共どうかした?」  俺が悶々としている間に、トレーにラーメンを乗せた黒崎と神林が戻ってきた。 「いや、なんでもない。俺も買ってくるわ」 「私も行くわ」  黒崎達の頼んだラーメンがうまそうだったので俺も同じラーメン屋に向かう。  そんな俺の隣にくっついて同じ方向へと向かうアリアに何を食べるのか聞いてみたら、俺と同じ意見でラーメンに決めたらしい。  結局帰宅部メンバー全員で同じラーメンを食べる結果に。  食券を店員に渡してラーメンが出来上がるまでの間、俺は隣で幸せそうな顔を浮かべているアリアに横目を向ける。  まるで二人っきりでデートをしているかのようだ。  そんな錯覚ともいえる特別の感情を抱いて思い出すのは、やはりさっきの言葉。 ––––––あれは本音か、冗談か。  どんなに心理学を極めようとも、凄腕のメンタリストになったとしても、真の意味で人の心を読み取ることは決して出来ない。  もしそんな能力を得たいのであれば、来世に期待して異世界転生するしかない。  三次元という現実世界で、そんな能力を得ることは出来ないのだから。 (あれ? 結局アリアの好きな人を聞かされていない気が……)  さっきの恥ずかしそうな感じといい、てっきり本当に教えてくれるのかと期待していたが、どうやら最初からその気はないようだ。  アリアの好きな人が誰なのか気になって仕方がないが、聞いたところでまたからかわれるだけだろう。  だが、これだけは言わせてくれ。  アリアに選ばれし男よ。––––––爆発しろ。
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