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新幹線で、拓の隣
拓と一緒にお昼を食べて、駅のお土産屋さんをぶらぶらして、笹かまぼことかお菓子を買って、新幹線に乗り込む。
「拓、彼氏みたい」
あ、つい、思ったことが口に出ちゃった!
「その方が自然だろーな」
背もたれの具合を調節してた拓が、ぽそっと答える。
「拓?」
思わず拓の顔をのぞき込むと
「俺はいつでもそのつもりだよ?」
ふふっ、と微笑む。
「…」
急に恥ずかしくなったあたしは、なんて返事したらいいのかわからなくて、下向いて…隣にいる、拓の手元を見てた。
あたしは、拓の手に…拓の想いに守られてるんだろうな、と思ったら、ドキドキ熱くなってくる。
拓がいま、何をしてるのかすごく気になるけど見られなくて、目線を窓の外に移す。
乗る前に買ってくれたドリンクを飲みたいのに、うまく開けられずにいたら
「貸して…はい」
「ありがと」
「ん」
さりげなく開けて、渡してくれた。
ひと口飲んで、そっと拓の様子をうかがうと、拓は目をつぶってる。
拓の横顔を見ながら、あたしはどうしたいんだろ、拓とどうにかなりたいのかな…考えなくちゃなんない、このまま甘えてるのはよくないよね、って思ってた。
すると、ぱちっと目を開けた拓と目が合う。
「っ!」
びっくりして目をぱちぱちしてるあたしを見て、拓がくすくす笑ってる。
「あや、さっきから百面相、どしたの」
「…そう?」
「そうだよ、なに緊張してんの、いまさら?」
「…だって」
思ってること全部、拓に見透かされてる気がする。
「困ってんなら相談乗るよ?」
「え?」
「まー、言いにくいかもしんないけど」
うん、めっちゃ言いにくい。だって、拓のことだもん。
「いいよ、無料で相談乗るよ?」
ニヤニヤしながら、拓は腕組みして、あたしを見る目がとっても優しい。
「でも、ここじゃ…聞かれちゃうもん」
「んー、なら、ちっちゃい声で話してみ」
あたしの方に、身を寄せてくる。
これって、こそこそ話しろってこと?
「はーやく」
ちっちゃな声の拓。
「えっ、と」
もじもじしながら、拓の耳元に近づいて、左手添えて
「今じゃなきゃダメなの?」
って、聞いてみた。そしたら拓があたしの耳元で
「どっちでもいーよ」
って…その声に、ゾクってして、ぶるって震えちゃった。
「あや?」
拓の優しい声に、ほっと安心してるあたし。
「ちょっと、休むね」
「ん、わかった」
目をつぶってたら、さりげなく拓が肩を貸してくれて…眠ってた。
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