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家族のあったかさ
ごく自然に、当たり前のように、拓と一緒に帰る。
新幹線でつい口にしてしまったあたしのことばに、拓は一切触れてこない。
「ありがと、拓」
話しながら歩いてたら、家に着いた。
「あや、お疲れ様。ゆっくり休んで」
「うん」
帰ろうとする拓に
「あの、明日って予定ある?家…いる?」
思い切って聞いてみた。
「や、特には、どした?相談ごと?」
「…行っても、いい?」
拓の住んでるところがどこか、よく知らない。けど、今を逃したら、またタイミングがつかめない、そう思った。
「んー、じゃあ迎えに来るよ、俺ん家知らないでしょ」
「うん、実はわかんない」
「昼ごろ?」
「かなぁ、連絡するね」
「おっけ、じゃ、また明日。あや、おやすみ」
「うん…またね」
軽く手を振って帰ってく、拓の背中を見送る。
「ただいま〜」
「おかえりなさい咲彩、疲れたでしょ、すぐご飯よ」
「ありがとー」
手を洗って、部屋に荷物を置きに行く前に
「お母さんお土産、懐かしくていろいろ買い込んじゃった」
大きな袋をテーブルに置く。
「あら、ほんとにたくさんあるのね、え、笹かまだけでこんなに?」
「次いつ行けるかわかんないし、どれもおいしくて選べなくて買っちゃったの、みんな笹かま好きでしょ」
「贅沢ね〜、食べ比べできちゃう、咲彩ありがとね」
お母さんうれしそう、よかった。
「着替えてくるね」
仕事から帰ってもひとりじゃない、みんな出かけて家が空っぽでも、そのうち誰かが帰ってくる。
家っていいな、家族がいるっていいな、と、改めて感じてる。
ひとりはひとりで気楽だったし、泣きたいときは誰にも遠慮なく泣けたけど。
でも、しばらくは家族のあったかさの中にいたいな。
そう思ってるあたしは明日、拓の部屋で、何をどう話すつもりなんだろ。
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