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ズルい?ずるくない?
「で、あやの相談ごとは?」
マグカップを手に戻ってきた拓。
「って、俺から切り出した方がいいのかなと思って」
あたしの隣ではなく、ソファに腰かけてる。
拓と目が合わなくて済むように、っていう配慮だろうな。
「聞くの、早かった?」
後ろから、拓が座りなおす、ソファの音が聞こえる。
「相談、ていうか」
なにを、どう話せばいいんだろう。
いろいろ考えてきたのに、ことばが出てこない。
「甘えてるなー、ってずっと思ってて…拓が優しいからって、このまんまなのはずるいかな、って」
「そーだな、それはズルい」
ことばとは裏腹に、拓の声はとっても穏やか。
「あや、この俺を利用してんの?」
「えっ?そんなことない!」
思わず振り向くと、拓はニコニコしてた。
「わかってるよ、ごめんあや」
あたしの隣にするりと座って
「なんか怖い?心配?不安なことある?」
あたしの目を、じっと見つめる。
「…拓に、ってこと?」
「そう、俺に。自然消滅とはいえ一度別れてるし、俺、そこそこアピってるから、若干ウザいかなと」
「アピ…ウザいって、そんなことないよ」
思ってもないことを言われて、混乱中。
「拓といるとホッとするし、居心地よくて甘えちゃってるなーって…それってやっぱり、ズルいの?」
「俺の好意を利用してると思うならズルい、無意識なら違う」
「無意識…そっか、うん、それ、あたし無意識きっと」
「だろうと思ってた、ふふ」
ぶどうがぎっしり詰まってるパンを半分こして
「はい、あや」
「ありがと」
おっきなパンは、ひとりでは食べきれないけど、ふたりなら食べられる。
ふたりでいたら、何種類かの味が楽しめる。
「俺も、あやといるとホッとするよ」
「おんなじだね」
うれしいな、って思った。
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