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拓への未練?
日帰り出張お疲れさま!っていうメッセージとともに、弁護士事務所の拓の名刺が貼られてる。
「がんばれ、拓」
画像に向かってひとりごと。あ、でも拓には聞こえないから、返信しとこっか。
既読ついたのわかってるもんね。
<がんばれ、拓>
思ったことをそのまま送って、それだけでは素っ気ないかなと、買ってくれた駅弁の写真を添えた。
<無理すんなよ、ちゃんと休め。うまそーだな、しっかり食え>
って、すぐ返事が来た。
「ふふっ」
ちょっと、くすぐったい気持ちになる。つきあってた頃を思い出すな~。
ありがと、って返信して、駅弁食べながら数回、拓とやり取り。
こんなふうにできてたら、別れなかったのかも、って思う。
拓が買ってくれた駅弁は見た目よりも多くて、お腹いっぱいになったけど、今やらないと眠くなってしまうから、コーヒーを飲みながら仕事のまとめ。
夢中になって仕事してたら、間もなく仙台って放送が流れて、慌ててパソコンを閉じる。
と。
<そろそろかな、気をつけて帰れよ>
って、また拓からメッセージ。
なによこれ、彼氏みたいじゃないの。彼女、いるくせに。
…違うか、そういう娘がいるくらいだから、気が利くってことね。
仙台に着いてアパートへ向かいながら、さっきまで渋谷の雑踏の中にいたなんてウソみたい、って思う。
たった1時間半で、ぎゅう、っと日常に戻された、そんな感覚。
もし泊まっていたら、拓と軽く飲んでたのかな、学生時代の頃の話とかして、ってぼんやり考えながら歩いていたら、アパートに着いた。
「ふー」
荷物を片づけてシャワー浴びながら、拓がこの部屋に何度か来たことを思い出す。
なんで。とっくに忘れてたのに。
涙つきで思い出しちゃうなんて、あたしよっぽど疲れてる。
あの頃…どちらからともなく連絡しなくなって、はっきり別れ話をしたわけでもなくて。
あたしは、拓に振られた、って思ってるけど、拓はどうなんだろ。
なんて、考えても仕方ない。もう5年も前のことだよ、しっかりしろ、あたし!
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