うれしさと寂しさ

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うれしさと寂しさ

ほぼ毎日、拓とメッセージのやり取りをしてる。 おはようとかお疲れさまとか、それくらいだけど、少し生活に張りが出た感じ。 たったこれだけで気持ちが明るくなるんだな~って、実感してる。 カレカノではないけど、だから気楽でいいのかも。 昔馴染みってことで、変に気を遣わなくてもいいし。 でも、あたしとのやり取りを拓の彼女が見たら、あんまりいい気はしないよね… 逆の立場なら、そう思う。 ま、見られたとしてもどうってことない会話だから、大丈夫かな。 それより。来月誕生日のあたし。相手もいないまま、歳だけ重ねてる。 まだ20代だけど、子ども欲しいならそろそろ、って言われるけど、お相手が… いずれ実家のある東京に戻りたい願望があるから、ここではちゃんと付き合ったことがない。 決して、拓をひきずってるわけじゃない、と、思う。 5年ぶりの拓とのこの距離感、心地いいもん。いい友だち、ってことだよね。 卒業してから仙台で5年。そろそろ辞令出る頃かな、と思ってたら、ほんとに辞令が出た。 東京の本社だって!! やっと、東京に帰れる~!!と思うのに、ひとりで踏ん張ってがんばってきたこの地、急に離れがたいような気がする。 居心地のいいカフェ、よくおまけしてくれる八百屋さん、いろんな人に元気をもらえたから、がんばれたんだよね、って、感傷的になってしまう。 お母さんに帰れることを伝えたら、やっとね、おめでとう、ってすごく喜んでくれた。 本社に異動は栄転だし、兄はいるけど娘はあたしだけだから、それもきっとうれしいよね。 実家に帰ったら、少しは親孝行しよう。 あ、そうだ。お母さん呼んで、観光しようかな。 今ここを離れたら、もう来る機会もないよね。 そう思ってたのに。 拓にも転勤を伝えたら、引っ越しの手伝いがてら、遊びに行くわ、だって。
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