1節 悪夢のはじまり

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1節 悪夢のはじまり

Prrrr……♪♫ 「ん…?」 さっきまでシンと静まりかえった部屋中にしばらく着信音が鳴り響いている。 時計は午前2時を回っていた。 ニューヨーク・コールドスプリング AM2:17 バイトから帰ってやっと眠りにつこうと、ウトウトとベッドへ倒れ込んだとこだった。 「誰よ、こんな時間に…」 重たい瞼をこすりながら、スマホ画面に目をやると、見た事の無い番号表示が出ていた。 見知らぬ番号ではあるが、止むことなく電話は鳴り続く。不審に思いながらも、通話ボタンに触れて耳に当てた。 「…ザッ…ザザッ……けて……ザッ…」 「何この雑音…、あのぅ…もしもーし」 電波が悪いのか、相手側からは砂嵐の様な雑音で小さく聞こえる声が掻き消されている。 「ザッザッ……た…ザザッ…けて…おねザッザザッー…い!…」 あれ、この声ー バイト仲間のナタリーに似ているような… 「…もしかしてナタリー?」 「ブツッーツー…ツー…」 「…やだ、切れちゃった。イタズラ?」 昨日はバイトも無断欠勤して、店長が怒ってたのを思い出した。 にしても、なんだったんだろ。さっきの見知らぬ番号からの電話。 Prrrr……! えっ!また着信? 画面にはナタリーと共通の友人でもあるロジーの名前が出ていた。 「あ、ロジー?こんな時間に電話しないでよ…びっくりするじゃん。……え?」 電話の先のロジーの声は何かに怯え震えている。 「ロジーってば!よく聞こえないよ。落ち着いて話して」 「だ、だから、ナタリーがアドリアハウスの中で……消えちゃったの‼︎」 アドリアハウスは去年の秋にトマス・アドリア一家全員が惨殺された事件現場の家だ。 当時、このアパートから、数メートル離れた民家で起こった事件で、犯人が特定できないのもありこの小さな町は火がついたように、TVや雑誌の記者達で溢れていた。 残忍な事件ではあったが犯人は未だに見つかっていない。 殺人があった家はそのままの状態で静かに佇んでいるが、 今や肝試しのスポットと化していた。 そして、あの家には妙な噂があった。
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