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「えぇと、事情はよく分かりました。でも県鳥から卒業しただけで、そうした被害が本当に無くなりますかね…?」
「無くなりますとも!!さっきもいいましたが、鳥っていうのは本当に嫉妬深い。私も鳥だからよく分かるのです。とにかく県鳥っていう肩書をもっているのが鼻につくのです。観光地のお土産キャラクターにもなっているし、看板やポスターもあちらこちらの名所に貼られている。観光地の土産売り場の屋根とか駐車場をご覧になったことありますか?嫉妬した鳥の糞だらけですから…」
羽根を大きく膨らませ、コマドリはマシンガンのごとく言葉を放つ。
「…なるほど、分かりました。お話を伺って、私としてもコマドリさんのご要望を是非とも受け入れたいと考えています。しかし、かといって他の県ではみんな県鳥を定めているというのに、うちの県だけ県鳥無しっていうのも、あまりよろしくはないのですよ…」
「え、どうしてです?」
「いや、足並みをね、揃えなきゃいけないっていうかね…」
「あぁ、人間はよくやりますもんね。あなたも中々大変ですな。」
「分かっていただけるなら有難い。そこで、コマドリさんを卒業させる代わりに、誰か他の鳥さんを指名または推薦していただけないでしょうか…?」
「ふぅむ…それも難しい。指名したところで、結局その鳥も私達と同じような扱いを受けるのは明白ですからね。そんな役を他の鳥に押し付けるのも、良心が大変痛みますよ。」
「そこをどうにか出来ないでしょうか…?」
「………………………分かりました。ではこうするのはいかかでしょう?私達コマドリは県鳥を続けます。ただしその代わり、安全な場所と定期的な食べ物を用意していただきたい。結局なにが一番困っているかというと、寝床と食べ物ですからね。それさえ確保していただければ、私たちは安心して暮らしていけます。小さな山で結構です。贅沢は申しません。ひとつ私たちのために用意していただければ、これからも私たちは県鳥として立派に務めをはたします。」
「あぁ、ありがとうございます。それくらいならば、すぐにでも立派な山をご用意いたしましょう。『コマドリ山』とでも名前を付けさせていただき、自然保護地区として指定いたします。」
「こちらこそありがとうございます。ではご準備ができましたら、皆を連れてお伺いいたします。本当にありがとうございます…」
そういうとコマドリは、窓から飛び去っていった。
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