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「……何だよ?」
「ん~、俺さぁずっと皆人に…言いたくて言えなかった事があるんだ」
窺うように振り返ると、真悟は真っ直ぐに俺を見ていた。
その視線の熱さに心臓が跳ねる。
「……な……何…?」
「……俺、……ずっと、…ずっと皆人の事が好きだった」
「…っ!!」
一瞬身動ぎした後、硬直したように動かない皆人の身体。
その頬に、髪に触れたいと伸ばしかけた指をぎゅっと握り込む。
「…友達とかじゃなく……本当に好きだった。それを伝えたくて、今日は来たんだ…」
そっと俺の肩を叩いて部屋の中へと戻る真悟を振り返る事もできずに、立ち尽くした。
せめてこれぐらいは許されるだろうと皆人の肩をそっと叩くと、振り返る事無く中へと戻った。
「真悟!!」
同窓会を終えそれぞれが二次会や帰路へと向かう中で、呼び止める声
「皆人?どうした?」
「………ちょっと……話がある…」
集団から離れ人影が途絶えた路地裏で向かい合い見つめた瞳は、あの頃は見つめる事の叶わなかった瞳
「…皆人?どうした?」
「なぁ、真悟」
「ん…?」
「今でも…」
「え?」
「……」
今訊かなかったら、この先二度と訊けない気がして
「…今でも……何?」
「…っ、……真悟は…」
「うん」
「今でも…俺のコト…」
「……」
「俺のコトを…その…」
「…好きだよ」
「…っ…!」
見つめる皆人の瞳が、薄く濡れ小さく揺れた。
見つめる真悟の瞳が、強く大きく煌めいた。
「…今も…今でも…好きだ。呼吸をする度に皆人を思い出す。忘れようとして忘れられなくて……ずっと触れたかった、ずっと…名前を呼びたかった…」
「……真悟…」
「昔も今も…ずっと……皆人の名前だけを呼びたかった…」
「………呼べよ…」
「…え?」
「……俺も…ずっと…好きだった、真悟の事が。でも…でも俺……」
「皆人…」
「…真悟が忘れられなかったように…俺も…忘れる事なんてできなかった。お前に…真悟に名前を呼ばれて触れて欲しいっておも…」
言い終わる前に引き寄せた人を強く抱き締める。
言い終わる前に強く抱き締められて目を閉じる。
「…もっと、もっと言って皆人…」
「…もっと強く…抱き締めろよ、真悟…」
「皆人、愛してる……呼吸するのと同じくらい当たり前に、俺には皆人が必要なんだ」
「俺も…俺も愛してる。だからもっと俺の名前を呼んでくれ。俺も……真悟の名前だけを呼ぶから…」
一度ぎゅっと強く抱き締めると、少しだけ身体を離してお互いの腕の中の人を見る。
触れたかった髪を、頬をそっと優しく撫でる。
「皆人…」
「…真悟」
初めて、お互いの唇に触れた。
- 終 -
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