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皆人と出会ったのは2年前、高校に入学して直ぐの頃だった。
クラスメートと笑い合う教室の中で、すれ違う廊下で、通学路で、ふとした瞬間いつも必ず視界に皆人が居た。
最初は何故なのか分からなかった。
けど、いつの間にか気づいてしまった…無意識に皆人の姿を追っていた事に。
知らず知らずのうちに皆人を探している理由が知りたかった。
だから、それからは意識して皆人の姿を追うようにした。
そして気づいた。
俺、アイツの事が好きなんだ…
高校生特有の若気の至りだとか、ただの興味本位じゃないかとか、色々考えたりもしたけど、そのどれもが何だか違う気がして…そして一度認めてしまうとどんどん皆人の事が気になって、アイツが触れる物全てに小さな嫉妬心を抱くようになった。
けれど、こんな想いは知られてはいけない。
もしも俺の皆人に対するこの想いを知られてしまったら、きっと俺はアイツと同じ世界に居られないだろうから…
皆人に知られない為に、周りの友人達にも気づかれない為に、俺は彼女を作った。
幸い容姿には恵まれたから、女の子と付き合う事に然ほど苦労は無かった。
けれど
どんなに綺麗な女の子と居ても、どんなに可愛い女の子と話していても、俺の頭の中はいつも皆人でいっぱいだった。
艶やかな黒髪を撫で、柔らかな唇に触れても、俺の心が満たされる事も皆人を忘れる事もできなくて、呼べない名前を胸の内で呟きながら目の前の彼女に笑いかけた。
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