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皆人side
「皆人~、一緒に帰ろうぜ~」
教室の入口でぶんぶんと手を振る匠に手を振り返す。
鞄を手にして椅子から立ち上がる。
視線を感じて振り返った先ですっと逸らされた横顔を数秒間見つめてから、入口で待っている匠の元へと向かった。
「皆人、真悟と喧嘩でもしたのか?」
「え?……いや、…なんで?」
「う~ん?なんでっていうか…さっき教室を出る時に皆人、真悟をチラ見しただろ?それが何だか怒ってるっぽかったからさ~。真悟の奴もバツが悪そうに顔を逸らしたし?」
顎に指を当てた匠が虚空を見る。
「…別に…何も無えよ」
「ふ~ん、そっか」
「喧嘩するほど仲良い訳じゃねえし」と、匠に聞こえないように呟く。
「でもさ~、真悟ってあそこまで彼女を取っ替え引っ替えだと、腹立つのを通り越してある意味清々しいよな!」
「…そうか?」
「だってさ~、今日言ってた “フラれた彼女” て付き合ってまだ3ヶ月ちょっとだろ?その前のコだって確か…そう!半年ももたなかったし!」
「よく憶えてんな」
「皆人は大事にしろよ~、今度の彼女。前の彼女と別れて1年近く女っ気無かっただろ?」
「ああ、…そうだな」
バンバンと少し強めに背中を叩く腕に笑い返しながら、瞼の裏に残像のように焼きついた横顔を消し去れないでいた。
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