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皆人side
「…え?同窓会の……幹事?」
『そう。皆人、一緒にやってくれよ~』
匠からの突然の誘いを受けたのは1ヶ月前だった。
「で、そっちはどれくらい連絡ついたんだ?」
待ち合わせた居酒屋のカウンターで、軽くグラスを交わす。
「ん~、だいたい10…いや15人かな。その中で参加の返事が来たのが8人だ。皆人は?」
「俺の方は連絡がついたのは13人。全員参加するってさ」
「おお~、さすが大手メーカーのやり手は違うな~!」
「バ~カ」
高校を卒業してから8年が経った。
高校3年の時に付き合い始めた彼女とは大学時代も続いた。
本当の自分を直隠して、真悟にして欲しかった触れ方で、真悟に呼ばれたかった声音で、彼女と付き合い続けてきた。
そんな自分を、自分でも浅ましく卑怯だと実感しながら。
けれど、
高校を卒業して以降、真悟の話は人伝でも殆ど聞く事が無かった。
会わなければ忘れられると、思春期の淡い思い出にできると思っていたのに、いつも感じていたのに振り返ると必ず逃げるように逸らされた視線とその横顔は、俺の記憶から消す事も過去形にする事もできなかった。
結局、彼女とは就職を期に終わりを迎えた。
あの時、心の何処かで安堵した俺は何処までも卑怯者だ。
このまま1人で生きていくのも良いかと思い始めた頃だった。
匠から同窓会の話を聞いたのは…
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