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再会編
真悟×皆人
同窓会当日はそれなりの人数が集まった所為か、かなり賑やかだった。
「お~っ!久しぶりだな、真悟!お前どうしてたんだよ~?」
「久しぶり。まあ、色々な」
懐かしい顔、余り記憶にないものの何処か見覚えのあるような顔、名前を聞いてもピンと来ない顔など、皆がそれぞれに肩を叩いたり派手に抱き合ったりしている中で、その人の顔は直ぐに分かった。
……忘れる筈なんて無かった。
「真悟!」
「いちいちデカい声で呼ぶなよ、匠」
「何だよ~、普通だろ~?なあ、皆人?」
「…久しぶり……皆人」
「……ああ、そうだな…」
ざわついた会場内の少し離れた場所から聞こえて来たその名前に、少しだけ振り返った。
「…久しぶり……皆人」
「……ああ、そうだな…」
匠が呼ぶ前に此方へ向かって来た男は、学生の頃と何ら変わらない…寧ろもっともっと格好良く見える気がした…のは、俺の欲目の所為だろうか。
あの頃、気づけば必ず俺から逸らされていた視線が、今は真っ直ぐに俺を見ている。
「卒業して以来だな」
「ああ…だな…」
「元気だった?」
「…ん、……そっちは…?」
「お~い!匠、ちょっとこっち良いか?」
「おう!じゃあ皆人、真悟、また後で」
他の参加者に呼ばれて離れて行く匠の背中を、数秒の間2人で見つめる。
「…真悟、…ビールで良いか?」
「ん?…ああ、ありがとう」
グラスを受け取る指が僅かに触れて、自分の鼓動が指先から伝わるんじゃないかと少し…焦る。
「……」
「……」
「…そういやお前、E&J商事の企画部で働いてるんだって?」
「ああ。……どうして知ってるんだ?」
「匠から聞いた…」
「そっか。…そっちは?」
「…LW開発だ」
「へえ、凄いな!!大手じゃん!」
「……んな事…ねぇよ…」
「……」
「……」
「…皆人、ちょっと外に出ないか?」
あちらこちらで歓声や笑い声の上がる中、中庭に面した大きな窓から外へと2人で出る。
外は寒かったけれど久しぶりに再会した所為か、緊張と興奮で熱くなっていた身体には心地好く感じられた。
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