ケース🔟 前世来世

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翌日。 ここは、高校の校舎の屋上。 そこに貴志と、友人の昌也がいた。 晴れ渡る青い空に、ゆっくりと雲たちが流れていく。 貴志は屋上に寝そべり、そんな広い空を見上げていた。 昌也はその傍で塀にもたれ、二人で何やら会話をしている。 「・・そうかあ〜! 叶恵さん、良かったなあ! 今日、学校終わってから、早速面会に行くよ!」 スラリと長身の昌也は、その高い目線から下を見下ろした。 寝転んだ状態の貴志は、雲を見つめたまま話を返す。 「ああ。昌也。ありがとう。母さんも喜ぶよ。」 「また、あのタコ焼きを食べるのが、楽しみだなあ。」 昌也が、笑顔で言った。 「お前の分は、俺が焼いてやるよ。」 貴志が、口を尖らせて言う。 「えっ? お前も、タコ焼き屋を手伝うのかよ〜。タコ焼き、作れるの?」 苦笑いの昌也。 「タコ焼きぐらい、目をつぶって作れるよ。」 「ハハハ。絶対、お前火傷《やけど》しそうだな。」 「するかよ〜。意外と、俺が作ったタコ焼きは、美味いかもしれないぞ。」 貴志は、昌也の方を見ながら言い返した。 「あ、そう言えば、美咲ちゃん。バイト辞めたんだって?」 話題を変える昌也。 「ああ。そうだよ。海外でやりたい事を勉強する為に辞めたんだ。」 「そうか。この前、スーパーに行ったら鬼切店長がいて、その話を聞いたんだ。急だったんだな。」 貴志は、深い溜息をついた。 「まあでも、やりたい事を見つけて、それに向かって頑張れるのは凄いよ。」 「ふ〜ん。・・なあ、貴志。」 「ん? 何だ?」 「お前は、それで良かったのかよ。」 昌也が、少し真剣な表情になって聞く。 「どういう事だ?」 「いや、・・俺は、てっきりお前が美咲ちゃんの事を好きなんだと思ってたから。」 そこで、貴志が体を起き上がらせて言った。 「何言ってんだよ。・・まあ好き、というのは、ぼんやりあった感じがするけど。でもな。それ以上に俺は、彼女を応援してあげたいって思ったんだ。」 「へぇ〜。カッコイイ事、言ってるけど。やっぱり好きだったんじゃないか。」 意地悪そうな顔で、昌也が投げかける。 「あんまり、意地悪く言うなよ。いつも人からモテていて、バスケしか知らないお前には分からないだろ。」 貴志が、言い返した。 「ハハ〜、どうせ俺は、バスケ・ラブだよ〜!」 昌也が、ふざけた言い方をする。 立ち上がった貴志は、昌也と同じぐらいの長身で並び、遠い景色を見ながら話した。 「・・・それに、美咲は何年かしたら、また日本に帰ってくるって言ってたよ。」 昌也も、同調するように言葉を返す。
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