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やや興奮しそうな貴志を諫めるように、鬼切店長が言葉を挟んだ。
「貴志。お前の言ってる事は分かる。まずは、落ち着くんだ。」
そこで貴志は、急に顔を上げて鬼切店長の方を睨む。
「それだけじゃないです! 桜北 誠の事はその前だし、直接俺の知らない人だから、別にいいです! でも、鬼切店長の祖母・蓮浄さんはあの後、生まれ変わりを探して、俺の妹が生まれ変わり、だって見つけたって事ですよね。そして、この和室にある漆塗りの箱に書いてある妹の名前・・。あれを書いて、また呪いをかけたんです。つまり、その呪いのせいで、妹は死んだって事じゃないですか! 絶対、許せませんよ! 妹を返してくださいよ!」
「分かる! 分かるよ、貴志!少し落ち着いて・・。」
そう言って説得する鬼切店長を振り切って、貴志は突然立ち上がり、和室から出ていった。
「待て! 貴志!」
止める鬼切店長の話も聞かずに、貴志はそのまま外へと駆け出し帰っていく。
玄関外まで追いかけてきた鬼切店長であったが、去っていく後ろ姿を見つめて途方に暮れた。
「・・・貴志。」
静まり返った夜の海。
殆ど風もなく、緩やかに寄せる水面の音だけが僅かに聞こえる。
そして、眠りについたはずの小島。
そこにあるログハウスの建物から、一際大きな声が響いた。
「えっ⁈ 本気で言ってるの⁈」
その声の主は、短髪黒髪で小柄のポッチャリ体型なアブだった。
更にアブは、目の前にいるメグ・マーチンに告げる。
「どこに行くんだい⁈ この子たちも連れてるのに・・。」
背中まで伸びたブロンドの長い髪で、メグは透き通ったブルーの瞳を向けて、申し訳なく謝った。
「アブ・・。ごめんなさい。あなたとプランクには本当に感謝してるゥ。」
そんな言葉は耳に入らず、アブは傍にいた幼いエイミーを見ながら言う。
「ここにずっと一緒にいればイイんだよ。」
心配そうな表情をするエイミー。
ジョオは、少し離れた所の椅子に座り、黙って話を聞いている。
その横には、俯いたままのベスがいた。
メグが自分の思いをぶつける。
「これ以上、アブとプランクに迷惑はかけられないワ。それに・・・私たちには、やらなければならない事がある。」
そこでアブは、俯いて黙り込んだ。
部屋の中に、重苦しい雰囲気が広がる。
「・・・船は、好きに使いな。」
そこで沈黙を破ったのは、隅の方で背中を向け何やら作業をしていたプランクだった。
いつも無愛想な彼だが、その一言に全ての思いが込められている。
メグたちの方は見ようともせずに作業を続けているプランクへ、メグが言葉を返した。
「プランク・・。ありがとう。」
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