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横には美咲が、満足そうに立っている。
「これで、私と付き合ってくれるかな?」
貴志は、現実だと確認するかのように、自分の頭を激しく両手で掻いた。
「うわー! 何でこうなるんだよ!」
貴志はもはや、頭の中が困惑し、整理出来ない状態になっている。
「・・美咲。」
「ん? ・・なあに?」
美咲が自分の髪を扱いながら、返事した。
しんみりと貴志が、想いを告げる。
「ありがとうな。さっきは強引な部分もあったけど、美咲なりに伝えてくれたんだよな。」
黙って話を聞いている美咲に、貴志が話し続ける。
「何か突然だったから、俺の方が混乱しちゃって・・・。」
「いや・・私こそ、本当に強引だったから、ごめん。」
美咲がペコッと頭を下げた。
貴志が真剣な表情へと変わり、美咲の方を見つめながら言う。
「ただ・・返事は少し待ってくれ。俺、不器用だから、こういう事は気軽に返事出来ないし。きちんと真面目に答えたいんだ。だから・・。」
「もう、分かったよ。貴志、大丈夫だよ。返事、待ってるから。」
美咲が、笑顔になって言った。
—————————————————。
貴志の記憶が、鮮明に蘇る。
そうだった・・。
あれから、色々な出来事が身の回りで起こったとはいえ、結局何の返事もしないまま、貴志は今日まで、やり過ごしていたのだ。
気まずい雰囲気になりながら、貴志は美咲への返事を試行錯誤している。
「・・・あ、美咲。あの時の返事は・・。」
そう言った時、まるでその言葉を打ち消すかのように、突然美咲が言葉を告げた。
「貴志。・・返事は、もうイイの。」
「えっ?」
美咲の意外な返答に、驚く貴志。
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