ケース🔟 前世来世

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横には美咲が、満足そうに立っている。 「これで、私と付き合ってくれるかな?」 貴志は、現実だと確認するかのように、自分の頭を激しく両手で掻いた。 「うわー! 何でこうなるんだよ!」 貴志はもはや、頭の中が困惑し、整理出来ない状態になっている。 「・・美咲。」 「ん? ・・なあに?」 美咲が自分の髪を扱いながら、返事した。 しんみりと貴志が、想いを告げる。 「ありがとうな。さっきは強引な部分もあったけど、美咲なりに伝えてくれたんだよな。」 黙って話を聞いている美咲に、貴志が話し続ける。 「何か突然だったから、俺の方が混乱しちゃって・・・。」 「いや・・私こそ、本当に強引だったから、ごめん。」 美咲がペコッと頭を下げた。 貴志が真剣な表情へと変わり、美咲の方を見つめながら言う。 「ただ・・返事は少し待ってくれ。俺、不器用だから、こういう事は気軽に返事出来ないし。きちんと真面目に答えたいんだ。だから・・。」 「もう、分かったよ。貴志、大丈夫だよ。返事、待ってるから。」 美咲が、笑顔になって言った。 —————————————————。 貴志の記憶が、鮮明に蘇る。 そうだった・・。 あれから、色々な出来事が身の回りで起こったとはいえ、結局何の返事もしないまま、貴志は今日まで、やり過ごしていたのだ。 気まずい雰囲気になりながら、貴志は美咲への返事を試行錯誤している。 「・・・あ、美咲。あの時の返事は・・。」 そう言った時、まるでその言葉を打ち消すかのように、突然美咲が言葉を告げた。 「貴志。・・返事は、もうイイの。」 「えっ?」 美咲の意外な返答に、驚く貴志。
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