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その声掛けに、くるりと珠里の方へと振り返った子供は、綺麗な青い瞳から涙を流していた。
そこで、ハッとする珠里。
女の子で、外国人!
その女の子は、ブロンドの長い髪で後ろを結び、大きなストライプのリボンをしていた。エプロン風の上着と、ブルーのワンピースを着ている。
黙ったまま、珠里の方を見ている女の子。
「ママを探しているの?」
更に、話しかける珠里。
頬に涙痕を残したまま、女の子は何も答えなかった。
珠里はしゃがみ込んだ状態で、女の子の傍に寄り添い、様子を窺う。
「あっ、そうか。もしかして、日本語が分からないよネ。」
その言葉を聞いて、女の子は首を横に振って答えた。
「分かる。言葉、分かる。」
珠里は、満面の笑顔を浮かべて、ニッコリと語りかける。
「凄い! 日本語、上手だね〜!」
そう言いながら珠里は、女の子の小さな頭を撫でた。
「可愛い〜ネ! 名前は?」
女の子に対して、愛着が生まれてきた珠里は、続けて聞く。
まだ不安そうな顔の女の子は、ただ首を横に振った。
そして、
「ママは、いるから大丈夫。」
と呟く。
「そうなんだ〜。ママは、どこにいるのかな?」
珠里がそう尋ねた時、彼女の背後の向こうから呼びかける声が聞こえた。
「お〜い! 珠里! ここにいたのか〜!」
その声の方へ、珠里が振り返ってみると、向こうから駆け寄ってくる江戸川の姿がみえる。
「足手まといが、来たか〜。」
珠里は気怠そうに言いながら、スッくと立ち上がった。
すぐに、珠里の所まで駆け寄ってきた江戸川が投げかける。
「こんな所で、どうしたんだ? 何か手がかりは掴めたのか?」
「ああ、まあ。今ちょうど、迷子らしき、この女の子を見つけたから。」
珠里は、状況をそう説明しながら、再び女の子の方を向いた。
しかし、そこにはもう誰もいない。
「何だよ。女の子って、どこにいるんだよ。」
疑問に思った江戸川が言い放っていたが、つい今しがたまで、ここにいた女の子が消えてしまった事に珠里は焦り、辺りを見渡してみた。
「つい今まで、ここにいたのよ!」
その事に、江戸川も一緒に辺り一帯を見回す。
「嘘だろ! それとも幽霊か? そんな女の子、いないだろ!」
困った表情をして腕組みし、首を傾げる珠里。
そうしてその途端、珠里はハッと悟ったように声をあげた。
「何だ? 急に、どうしたんだよ?」
焦ったような様子の珠里を見て、江戸川が尋ねる。
そんな江戸川に対して答えずに、珠里はいよいよ思い出しながら悔しそうにセリフを吐いた。
「しまった! 何て事! 気がつくのが遅かった!」
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