ケース🔟 前世来世

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頭の中が、疑問だらけの江戸川は、呆気に取られた顔で聞き返す。 「何だよ⁈ さっきから、何の話だよ!」 まだ慌てた様子の珠里は、周辺の通り道を覗き込んだり、左右の通りの先を見渡してみたが、時既に遅かった。 そして、後悔の言葉を吐き捨てる。 「あれは、間違いなく、探している四姉妹の一人だったはずよ! アメリカ人の女の子だった。」 「何⁈ 四姉妹の女の子と、接触したのか⁈」 聞き返す江戸川をよそに、珠里は唇を噛み締めながら言った。 「あの、青い瞳・・。あの顔・・。忘れないわ。」 何事もなかったかのように、商店街はいつもの雰囲気で、町行く人々が通り過ぎていく。 夕焼けに染まる、スーパーエブリィの建物。 そんな穏やかにみえる雰囲気も、スーパーの中では来客の波に奔走していた。 「ええぇっ⁈ 辞めた⁈ 」 店内の来客たちが、その遠慮のない大声の方へ注目を集めている。 そこで騒がしく戸惑いの声をあげているのは、小太り体型の店員、廣川 大助であった。 彼は、周囲の目も憚《はばか》らず、年配の女性店員2人から聞いた話で困惑している。 そうして買い物客を掻《か》い潜《くぐ》りながら、通路を走り抜けていった。 彼が辿り着いたのは、食品売り場で他の店員と話をしていた鬼切店長の所である。 廣川は、膨らんだお腹を揺らしながら、体型とは似合わないスピードで、鬼切店長の傍までやってくると、ハァハァと息切れさせて呼吸を整えていた。 「おい。どうしたんだ?」 突然の荒々しい様子に、鬼切店長が驚いて尋ねる。 廣川の今の状態だけ見れば、フルマラソンを走り続けてきた選手がゴールテープを切った直後の、まさにそれだった。 平静な呼吸もままならないで、廣川自身も急を要する状況で問いかける。 「ハァ・・ハッ、店長。・・美咲ちゃんが、バイト辞めたって、本当ですか?」 鬼切店長は、冷静な表情で質問に答えた。 「ああ。そうだ。辞めたよ。」 「そんなぁ〜〜〜〜!」 その現実的な確証を得て、廣川はまた大きな声をあげる。 「まあ、急だったけど。理由があるし、あの子だって、いつまでもバイトだけやってるわけにはいかないだろうからな。将来を見据えて頑張ってほしいからな。」 鬼切店長が、話を付け加えた。 グッタリと顔を項垂れて、溜息をつく廣川。 「あ〜・・・。まだ美咲ちゃんの携帯番号も、LINEも聞いてなかったのに・・。」 そんな廣川の肩を、軽くポンッと叩きながら、鬼切店長が励ます。 「まあ、みんな、彼女が辞めた事は残念だと言うけれど。仕方ない事だ。みんなで応援してやろう。」
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