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・・それは前に、見覚えのある過去の場面であった。
その日の夜。
自宅の和室で、一人座っている蓮浄。
ひんやりと寒さが伝わるこの部屋で、静かに佇《ただず》んでいた。
蓮浄のその手には黒い漆塗りの箱が乗せられていて、簡単に蓋が開かないように念入りに赤い紐で縛ってあり、更にお札《ふだ》のような紙が貼り付けられている。
蓮浄は徐《おもむろ》に、赤い紐を解き、その蓋をそっと開けた。
箱の中には、拳大《こぶしだい》程の大きさの水晶玉が大事に保管されている。
水晶玉は透き通る程の清廉さと、どこか妖艶な輝きを放っているかのように見えた。
蓮浄はその水晶玉を慎重に取り出し、自らの頭上へと掲げて、透き通った彩りの細部を観察するように眺めている。
「・・ふぅ。傷やヒビはない。大丈夫じゃな。・・傷が入ってしまうと効力がなくなるからな。」
やがて、再び水晶玉を箱の中へと収めると、同じように中に入れられていた一枚の紙を取り出した。
その紙に書かれていた事は・・。
“封” と記された文字と、その下には・・・・『桜北 誠』と書かれている。
蓮浄は、その名を喰い入るように見つめた。
そして急に険しい顔つきになり、独り言を呟く。
「アビゲイル・ウィリアムズ・・・。魔女の根源ともいえる恐ろしい人物。あやつの生まれ変わりを、ようやく見つけたんだ。一年前に見つけ、そしてこの”死” の呪縛をかけた。早い者なら数日・・。遅い者なら一年。もうすぐ、その一年が経とうとしている。長かった・・。ようやく、生まれ変わった桜北 誠を葬る事が出来る。」
蓮浄のその念を帯びた姿は、どこか異様な雰囲気があり、強い怨念が感じられた。
そんな矢先、部屋の外の廊下から呼ぶ声が聞こえてくる。
「母さん? ・・・母さん。」
そうして、蓮浄の娘・弘子が和室へと入ってきた。
蓮浄は素早く、黒い漆塗りの箱の蓋を閉め、収納扉の中へと仕舞い込む。
「母さん? まだ起きていたの?」
心配そうに声をかけてくる弘子に、蓮浄は背を向けたまま答えた。
「んん? ああ。ちょっと、用事があったからね。もう寝るよ。」
それを聞いて安心したのか、弘子は安堵の声を漏らす。
「分かった。じゃあ、おやすみ。」
「ああ。お前もお腹の子の為に、体を休めてな。」
部屋を出ていく弘子。
一人になった蓮浄は、静かに閉じた収納扉をじっと見つめながら、何かを考えていた。
そして、そっと呟く。
「恐ろしい事が起こる前に、決着をつけないと、ね。」
寒い夜が、静かに町を包んでいった。
・・・・・・・・。
翌日。
誰もいない和室。
そこへ、こっそりと現れる弘子。
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