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「はい。おかげで、だいぶ調子がイイみたいです。」
それに対して、担当医が投げかけた。
「そうですか。安心しました。先週の検査の結果も、良くなっていますし。2、3日したら、一般病棟の方へ移ってもらって、良いと思います。」
その言葉に、貴志は歓喜の声を浮かべて言う。
「えっ⁈ 先生、本当ですか〜⁈ 一般病棟という事は、母さんはもう、かなり良くなってるんですね?」
担当医が、返答した。
「貴志くんも、ほぼ毎日お見舞いに来て、よく頑張ったね。もう家族以外の面会も普通に大丈夫だろうし、一般病棟に行って、少しずつ日常生活に戻していくんだよ。」
それを聞いて、貴志は深々と頭を下げる。
「先生! ありがとうございました!」
ベッドから叶恵も一緒に、お礼の言葉を伝えた。
「まだ退院まで、少しあるんだから、もう少し頑張ろうね。」
そう告げると、担当医は看護師と一緒に、治療室を出ていく。
その後貴志は、叶恵の手を握って一緒に喜びあった。
「母さん! 良かったね! ここまで頑張ったね! 面会出来るって、周りの人たちにも伝えておくよ!」
「貴志。本当に、心配かけたね。ありがとう。」
叶恵は、精一杯の感謝を伝える。
「そんな事、もう大丈夫だよ。早く退院して、また美味しいタコ焼きをお客さんたちに、食べてもらわないとね。」
貴志が、満面の笑顔で話した。
そこで、叶恵が打ち明ける。
「もちろん、タコ焼き屋も頑張るけど。こうして、入院している間に、色々考えてみたのよ。タコ焼きと一緒に、また占いもやろうかなって・・。約束を破る事になるんだけどね。」
その発言に、貴志はハッと驚いた顔をしたが、その後すぐに力強く言った。
「占い、また始めると良いよ。俺は賛成だよ。約束なんて、・・・しかも、容疑者で卑劣なあの四姉妹との賭けで、決めただけじゃないか。そんなの守る必要ないよ。」
叶恵は、あくまでも苦笑いしながら返す。
「私は、約束破りだ、って人から罵《ののし》られたっていい。それでも、どこかの誰かが人生の道に迷って立ち止まっているなら、私は占いをして、何かそんな人の助けになれたらな〜って考えたんだよ。」
「誰も、罵ったり馬鹿にする人はいないと思うよ。」
「私は、こうして、せっかく命を拾われたんだから・・・。これからは、ただ生きていくんじゃなくて、もっと人の為になれるように意味を持ちたいと思ってね。」
叶恵は、笑顔で話した。
「分かった。俺も出来る事があったら、協力するから。」
貴志も、その気持ちを叶恵に伝える。
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