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「そうか。なんか、その時が楽しみだな。俺たちも、その時までに、もう少し大人になっていないといけないな。」
昌也が、優しく笑いかけてきた。
「そうだな。俺たち、まだまだ子供だな。」
貴志も、はにかんだ笑顔をする。
そこで昌也が、遠くに見える景色へと目を移して言った。
「なあ、貴志。」
「何だ? 昌也。」
「これからも、何か大きな事とか、小さな事でも、いつでも俺に頼ってくれ。」
「何だよ、急に。」
貴志が、笑いながら返す。
「どんな時も、駆けつけるから。」
「あ、・・有難いけど、どんな時もって、無理だろ〜。」
「じゃあ・・なるべく、駆けつける・・。いや、出来るだけ駆けつける、かな。」
「ハハ。なんか、自信なくなってきてるじゃん。」
貴志が、鋭く突き返した。
「いや、だって、お前も同じ条件で、俺の時に駆けつけて来ないといけないんだぞ。」
「えっ? 俺も? 俺は無理。色々、忙しいと思う。」
「お前の、どこが忙しいんだよ〜。」
「これから、忙しくなるんだよ〜。」
そんな親しみを込めた言い合いをした後、二人は可笑しくなって、お互い笑い合う。
柔らかい風が、屋上の二人を撫でていった。
再び、青空を見渡した貴志が、一つ深呼吸をして言葉をかける。
「・・ふぅ。昌也。」
その貴志の方を見る昌也。
「ありがとうな。」
貴志が、照れ隠ししながら礼を言った。
「お互い様だろ。」
そう言って、笑顔で返す昌也。
そんな二人を、穏やかな天候が包み込み、まるで見守っているかのようだった。
2日後・・・。
真っ暗な夜の通りを、家路へと急ぐ貴志の姿があった。
高校の課題である提出物を遅くまでやっていた為、いつもより下校が遅くなり、それから連絡があった鬼切店長の家に向かい、夕食までご馳走になる。
ふと時間を見ると、23時30分も過ぎていたのだ。
母・叶恵が予定通り、一般病棟へと移る事ができ、その報告もあり鬼切店長に会っていた。
人通りの少ない夜の町を、足早に歩いていく。
そんな中、貴志は一人、色々な事を思い浮かべていた。
先日鬼切店長と一緒に、ヒスイの宝石に願いを込めて、半信半疑ではあったものの巻物に書いてある通り、”妙“ の文字ともに叶恵の名を記し、早期の回復を期待したばかりだ。
それが功《こう》を奏《そう》してか事実、叶恵は病状が安定してきて、すぐに一般病棟へも移れた。
という事は反して考えれば、あの呪い効果のある、水晶の玉の力も本物という事になる。
母親の回復に喜ぶ気持ちもあるが、貴志の内心は複雑なものになっていた。
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