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あの蓮浄が所持し、巻物に書かれていた、水晶玉とヒスイのそれぞれの効力は、本物だという可能性が濃厚になってきたわけだ。
いわば、”生“ と ”死“ を司る、恐ろしい宝石という事になる。
方向性は違えど、人の”念“ というものは通ずるものなのか。
それはさておき、たとえ叶恵が元気になったとしても、貴志の心は許し難い思いがあった。
母・叶恵をこんな目に合わせた人物を、このまま絶対に許すわけにはいかない。
もちろん、早急な逮捕を願っているのだが、チャンスさえあれば敵《かたき》を討ちたいと、熱い思いが込み上げてくる。
容疑者である四姉妹たちが、秋原家の周りにいつ現れるかもしれない為、病院や高校・自宅を刑事らが定期的に見回りをしてくれているのだ。
そんな事を考えながら、大通りを過ぎて、裏通りの道へ入ると、もうすぐ貴志の家であるタコ焼きハウスが見えてくる。
一番危険性が考えられる自宅にも、刑事らが交代で見張ってくれているのだ。
貴志は、ほとんど街灯のない裏通りを真っ直ぐに歩いて、自宅の方へと向かっていく。
自宅のタコ焼きハウスのシャッターが、暗がりの中見えてきた20メートル程手前で、黒い人影を見つけた。
本来なら自宅を見回りしてくれている警察の誰かが、いつものようにいるはずなので、それかと思うべきだが、その時の貴志は瞬間的に嫌な予感を感じていた。
この距離からでは、その人影の特定は判断出来なかったが、入口のシャッターをカチャカチャと扱っている様子が、妙に怪しい。
警察官では、・・ない?
咄嗟の判断で、貴志は電信柱の物陰に隠れて、その人影の様子を窺った。
警察官じゃないなら、誰だ?
もしかして・・・。
その人影は一人で、どうやらシャッターを開けようと苦戦しているようだ。
そこで貴志は、重要な人物の存在を思い出し、ハッとする。
父・修治か?
久しぶりに、家に帰ってきたのか。
それなら、さしたる問題はない・・。
そんな安堵に近い、勘違いともいえる警戒心を解き、貴志はフッと溜息を溢《こぼ》した。
その途端、貴志は再び、全身に緊張感が走り呼吸を止め、慌てて物陰へと身を隠す。
それは、修治かもしれないと安心した矢先、立ち上がったその人影の身長が妙に高い事と、暗闇で姿は見えなくても、そのシルエットから修治の体型ではなく、スラリと細身の人物である事が分かったからだ。
これは、父・修治ではない。
では、誰だ?
隠れて観察する貴志の鼓動が、速くなり緊張が走る。
最悪の事態を想定した。
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