ケース🔟 前世来世

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ちょうど、見回りの警察官は不在なのか? この時間帯なので、他にも人通りもなく、ここには貴志しかいない。 決死の覚悟で、息を止め存在を消して、ゆっくりとその人影へと近づいていく貴志。 電信柱から離れ、人影を背後から見据えてみる。 それは、・・・・・女性だ。 白い半袖を着て、長い下半身にはデニムを履いている。 貴志と同じぐらいの身長で、スラリと高くスレンダー体型。 ここから見える後ろ姿は、黒の長い髪を一つに結んでいた。 こ、こいつは⁈ 貴志は、その人物の顔は見えなくても、それがあの時会った事のある四姉妹の一人、ジョオである事が分かった。 叶恵を探してやってきたのだろうか? それとも、今度は貴志を探して・・・? そのジョオは、背後の離れた位置に貴志がいるとも知らず、開かないシャッターを扱っている。 貴志は10メートル程離れた位置から、様子を見ていたが、やがてジョオは諦めたのか、やむなく歩き去っていった。 すぐに貴志が、入口のシャッターまで歩み寄ると、隣家との間の隙間通路で、何かを発見する。 暗闇で分かりにくかったが、それが人である事は確認出来た。 貴志はすぐに、その倒れている人に近寄り、声をかける。 「大丈夫ですか?」 その呼びかけに、呻きながら体を起こして座り込んだ。 「ぐうぅ・・。あれでも女か。強すぎる・・。」 寄り添いながら、そう言う人物の顔をよく見ると、それは刑事課係長の岩倉だった。 「け、刑事さん⁈ 大丈夫ですか⁈」 貴志が、心配しながら声をかける。 岩倉は、自分の腹部を押さえながら返答した。 「くうっ・・。貴志くんの家を見張っていると、さっきの女が現れて・・。例の四姉妹の一人だと思った時にはもう、格闘技仕込みの蹴り技を使われて、倒されたしまった。あの女、強すぎる。」 貴志は、岩倉の話を聞きながら、ジョオの走り去っていった方を見る。 「やっぱり・・あの四姉妹は危険人物だ。気をつけ・・。」 岩倉が話している途中で、突然貴志が立ち上がり、駆け出していく。 「貴志。どこへ行く?」 「あ、あの、すいません。あとは、お願いします。」 そう言い残して、貴志はジョオが去っていった方向へと走っていったのだ。 貴志自身でも、思わぬ速さでジョオの後を追う。 「これを逃したら、アイツらはまた捕まらないかもしれない・・。急げばまだ、間に合うはず。」 誰もいない静かな暗い通路を貴志は、ひたすら走り続けた。 「まだ、そんなに遠くへは行ってないはずだ。」 すると、商店街を過ぎた向こうの通りを、歩いていくジョオの後ろ姿が見える。 「いた。」
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