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それに対してジョオが、準備運動的に首を回して言葉を返した。
「ジェンダーの時代に、男とか女とか関係ないヨ。思い知らせてやるから、来いヨ!」
真剣な表情で身構える昌也。
ジョオと静かに対峙した。
貴志も、恐る恐る体制を整える。
一瞬の隙をみて、ジョオの方へ飛び込んでいく昌也。
素早く連続で繰り出す昌也のパンチだったが、ジョオはそれをしっかりと冷静にかわしていった。
そして、ジョオの鋭い蹴りが昌也の足を捉える。
少しふらつく昌也だったが、なんとか耐えて体制を整えた。
「そんな攻撃は、当たらないヨ。」
ジョオが、恨めしそうな顔で言う。
昌也は、貴志へと投げかけた。
「貴志! お前も戦え! コイツらに叶恵さんは、あんな目に遭わされたんだ! 絶対、許せないぞ!」
そう言われて頷いた貴志は、顔つきが勇ましく変わる。
ちょうどジョオの左右へとそれぞれ位置取りした貴志と昌也は、両方から同時に攻撃する事にした。
身構えたジョオは、チラチラと交互に、二人の動きを窺う。
再び、昌也が勢いよくジョオへと向かっていった途端、貴志も一緒に攻撃へと入った。
昌也のパンチと蹴りが飛び出す中、ジョオはそれを素早くかわして、ほんの一瞬の隙に昌也の右ボディへとパンチを打ち込む。
そして動きの止まった昌也の後、ジョオは反転し、後ろへ回り込んでいた貴志へと長い足で蹴りを繰り出した。
まるで巨大なムチのような蹴りが、貴志の頭を直撃する。
そのまま貴志は、自分の頭を押さえて、膝をついた。
「くっ!」
昌也は右脇腹を押さえて、歯軋りする。
座り込んで動けなくなった貴志に、ジョオの追撃の前蹴りが飛んできて、そのまま貴志は後ろへと倒れていった。
「貴志、大丈夫か⁈」
すぐに駆け寄り、貴志を助け起こす昌也。
「ほらほらもう、KOしてるじゃん。」
ジョオが、呆れた顔で言った。
「大丈夫だけど。俺はもう戦えないよ。」
再び鼻血を流しながら、支えられた貴志が呟く。
昌也は、貴志を体で支えながら、ジョオの方を睨みつけた。
そうして思いついた行動が、突然昌也は貴志を引き連れて後方へと走りさがる。
「貴志! こっちへ行くぞ!」
二人は一瞬のうちにジョオから離れて、偶然見つけた建物のドアを開けて、中へと飛び込んだ。
昌也は、貴志の怪我の心配と、これ以上戦い続けても今は分が悪いと判断した為、ジョオから逃れたのだ。
建物の中へと入った二人は、真っ暗な中、長く伸びる廊下にいたが、昌也が先導して走っていく。
「貴志! こっちだ!」
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