ケース🔟 前世来世

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江戸川と珠里は、それぞれ持っていた小型ライトを点灯させ、周りを確認しながら廊下を進んでいった。 やがて二人は、エレベーターのある前に到着したが、もちろんそのエレベーターは、随分前から停止し使われなくなっている。 仕方なく、その横にあった階段を登りはじめた二人だったが、今更ながらにこの建物の広さを知るのだった。 2階へと辿り着いた二人は、そこで言葉を交わす。 「早く、貴志くんを見つけないといけないから。ここは、二手に分かれて捜すわよ。」 それを聞いて江戸川は、ムッとした顔つきで言い返した。 「それは、先輩である俺が決める事だ。」 「今は、そんな事どうでもいい。何かあれば、連絡して。」 そう言い残して、珠里の方はもう3階を目指して階段を登っていった。 残された江戸川は、不服そうに悪態をつく。 「チッ。可愛くない女だ。」 その後江戸川は、そのまま2階の棟を歩いていった。 一方、貴志と昌也は、『安置室』と書かれた部屋に身を隠していた。 真っ暗な建物の中でも、この部屋はより一層暗く、そして冷たい空気が流れているように感じる。 中央に置いている、白布が敷かれたベッドは破れて所々、錆び付いていた。 蝋燭の燭台と、線香の灰が残っている焼香。 貴志と昌也は、その陰に隠れていた。 「おい。この部屋、線香の臭いがするけど。ここって、まさか・・。」 蚊の鳴くような声で、貴志が尋ねる。 「多分・・この部屋は、あの部屋だよ。おそらく・・。やっぱり不気味だな。」 昌也も小声で答えた。 「あのさ。なんで、隠れる場所がここだったんだ?」 貴志が、昌也を睨みつけるようにして言う。 「仕方ないだろ。何の部屋とか選んでる余裕はなかったんだよ。入った部屋が、偶然ここだったんだ。」 昌也が、弁解しながら返した。 「もしもこんな所で、殺されてみろ。まさに、俺たちの墓場みたいなもんじゃないか。縁起が悪い・・」 貴志がそこまで言いかけた時、昌也が指を口に当てて静止する。 「シッーーー。」 「何だよ、急に。」 貴志が尋ねた。 昌也は、どこかに耳を傾けるようにして、何かを探っている。 「・・・・さっきから、どこか遠くの所で、何かの音が聞こえないか?」 「音? どんな音だ?」 そう言って、貴志も耳をすましてみた。 ・・・・・カァン。 ・・・・カァン・・。 どこからか、響くような物音が離れた位置で聞こえている。 ・・・カァン・・・・。 ・カァン・・・・。 貴志と昌也は、お互い顔を見合わせた。 そして二人は、息を呑み静かにその音へと耳を傾ける。
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