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江戸川と珠里は、それぞれ持っていた小型ライトを点灯させ、周りを確認しながら廊下を進んでいった。
やがて二人は、エレベーターのある前に到着したが、もちろんそのエレベーターは、随分前から停止し使われなくなっている。
仕方なく、その横にあった階段を登りはじめた二人だったが、今更ながらにこの建物の広さを知るのだった。
2階へと辿り着いた二人は、そこで言葉を交わす。
「早く、貴志くんを見つけないといけないから。ここは、二手に分かれて捜すわよ。」
それを聞いて江戸川は、ムッとした顔つきで言い返した。
「それは、先輩である俺が決める事だ。」
「今は、そんな事どうでもいい。何かあれば、連絡して。」
そう言い残して、珠里の方はもう3階を目指して階段を登っていった。
残された江戸川は、不服そうに悪態をつく。
「チッ。可愛くない女だ。」
その後江戸川は、そのまま2階の棟を歩いていった。
一方、貴志と昌也は、『安置室』と書かれた部屋に身を隠していた。
真っ暗な建物の中でも、この部屋はより一層暗く、そして冷たい空気が流れているように感じる。
中央に置いている、白布が敷かれたベッドは破れて所々、錆び付いていた。
蝋燭の燭台と、線香の灰が残っている焼香。
貴志と昌也は、その陰に隠れていた。
「おい。この部屋、線香の臭いがするけど。ここって、まさか・・。」
蚊の鳴くような声で、貴志が尋ねる。
「多分・・この部屋は、あの部屋だよ。おそらく・・。やっぱり不気味だな。」
昌也も小声で答えた。
「あのさ。なんで、隠れる場所がここだったんだ?」
貴志が、昌也を睨みつけるようにして言う。
「仕方ないだろ。何の部屋とか選んでる余裕はなかったんだよ。入った部屋が、偶然ここだったんだ。」
昌也が、弁解しながら返した。
「もしもこんな所で、殺されてみろ。まさに、俺たちの墓場みたいなもんじゃないか。縁起が悪い・・」
貴志がそこまで言いかけた時、昌也が指を口に当てて静止する。
「シッーーー。」
「何だよ、急に。」
貴志が尋ねた。
昌也は、どこかに耳を傾けるようにして、何かを探っている。
「・・・・さっきから、どこか遠くの所で、何かの音が聞こえないか?」
「音? どんな音だ?」
そう言って、貴志も耳をすましてみた。
・・・・・カァン。
・・・・カァン・・。
どこからか、響くような物音が離れた位置で聞こえている。
・・・カァン・・・・。
・カァン・・・・。
貴志と昌也は、お互い顔を見合わせた。
そして二人は、息を呑み静かにその音へと耳を傾ける。
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