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その時、江戸川はもうジョオの懐《ふところ》まで入り込んでいて、サバイバルナイフを持った片手を捻じ上げ、まるで藁《わら》人形のように簡単にジョオの体を投げ飛ばした。
地面に叩きつけられるジョオ。
その衝撃で、持っていたサバイバルナイフが床に転げ落ちた。
「くっ!」
それを見ていた江戸川が、サバイバルナイフを素早く蹴ると、部屋の隅の暗闇へと消えていく。
「これで、武器はなくなったな。」
江戸川が、調子良く言い放った。
倒れていたジョオは、脇腹を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
痛みと息苦しさが、酷いようだ。
「・・ふぅ。武器がなければ、私に勝てると思うのか?」
「これで、お互いフェアな戦いだろ?」
ニヤリと笑顔を返す江戸川。
脇腹を押さえたまま、呼吸を整えているジョオ。
そこで江戸川が、見透かすような目で告げた。
「それに・・・・。お前、あの時松田さんからやられた脇腹が、まだ完治してないみたいだな。」
額に汗を滲ませるジョオ。
そこで、江戸川はまるで、挑発するかのように手招きして言った。
「どうした? かかって来いよ。」
その途端、ジョオが一気に飛び込んでくる。
顔やボディへと連打に繰り出してくるパンチを、江戸川はガードで受け止めたり、素早く攻撃をかわした。
ジョオの長い手足と、その高身長からの攻撃は予想以上に圧力があり、江戸川は防御で精一杯である。
更に続けて、ジョオの追い討ちの連続回し蹴りが襲い掛かってきて、なんとか攻撃を受け流していた江戸川であったが、極めつけのバックスピンキックがヒットした。
後方へと、吹っ飛んで転ぶ江戸川。
「ぐうっ!」
胸部を押さえて、苦痛を浮かべる江戸川。
ゆっくりと呼吸を整えながら、ジョオは立っている。
江戸川は、青褪めた顔色で額に汗をかきながら、ゆっくりと呼吸した。
「くっ・・、コイツ。脇腹を負傷しているのに、こんなに強いなんて・・。」
その頃、山道の脇に停めてあったガンメタ色のスープラの横に、けたたましくサイレンを鳴らした警察車輌がやってくる。
同じく道脇に停車した後、その車輌から降りてきたのは、刑事課係長の岩倉と部下2名だった。
「係長。江戸川と白凪は、この奥の山道に入っていったようですね。」
部下の一人が言う。
険しい顔つきで、岩倉が答えた。
「あの二人。危険な目に遭ってなければいいが・・。この現場には、応援が急行している。それまでは無理に突入せず、状況を把握しろ。」
そうして三人の刑事たちは、車輌を停めた山道から脇道へと歩いていく。
静まり返った真っ暗なこの場所は、周囲は見渡す限り木々に囲まれているのだった。
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