ケース🔟 前世来世

58/80
前へ
/80ページ
次へ
珠里はしゃがみ込んで、二人の女の子に話しかけた。 「Well, ・・What are you doing here?」 すると、歳上らしい女の子の方が答える。 「・・私たちは怖かったので、ここに隠れてるの。」 その声を聞いて、珠里はホッと溜息をつき返した。 「ふぅ。日本語が話せるのね。怖かったわね。」 更に珠里は何かに気が付いて、小さい方の女の子に向かって話す。 「あっ・・。あなた。確か一度、商店街の通りで会った事あるわね? お母さんは、何処にいるのか聞いた後に、姿が消えたわ。」 すると10歳ぐらいの女の子が、コクリと頷いた。 「あなたたち、名前は?」 珠里が、二人の女の子の頭をそれぞれ撫でて聞く。 まず、茶色髪色の女の子が答えた。 「ベスよ。ベス・マーチン。」 その後、ブロンドの髪色の女の子が言う。 「私は、エイミーよ。」 珠里は安心とともに、一つの理解と納得が出来た事に何度か頷いた。 「なるほど。ベスとエイミーね。そういう事ね。私は、白凪珠里。珠里って呼んで。」 ベスとエイミーは、じっと珠里を見つめる。 そこでまた珠里が、立ち上がって言った。 「これで分かったわ。あなたたちは、あの四姉妹のうちの二人なのね。怖い思いをしたわね。」 その時また、2、3つのサイレンが重なり合って近付いてくる音が聞こえてくる。 それを確認した後、珠里がベスとエイミーに告げた。 「もうすぐこの建物は、警察とあなたたちのお姉さんとの激しい戦いになるわ。危険だから、あなたたち二人は私が安全な場所へ確保するから。」 ベスとエイミーは言われるままに、コクリと頷く。 「絶対に、私から離れないでね。」 ベスとエイミーは一緒に、珠里へと付き添った。 そこで、エイミーが持っていた四つ葉のクローバーのネックレスを差し出して言う。 「メグとジョオも助けて。もう怖い事を終わりにしたい。」 珠里は、そう訴えるエイミーを見ながら想像した。 一緒に連れ添ってきたこの幼い二人は、これまで怖い思いと苦しい気持ちを味わってきたのだろう。 「もう大丈夫よ。私に付いてきてね。」 三人は寄り添いながら、屋上テラスから建物内へと戻る。 いつ、容疑者である四姉妹の姉らと遭遇するか分からない。 その容疑者の同じ姉妹とはいえ、まだ幼いベスとエイミーまで、この危険な逮捕劇の抗争に巻き込む必要はないのだ。 珠里は、容疑者の捜索とともに、貴志の安全確保に加えて、ベス・エイミーを無事に警察で保護する事を目的とする。 先程、サイレン音が聞こえていたので、建物の表側に警察の応援隊が到着している事は分かっていた。 そこまで、ベスとエイミーを同行出来れば、安全が確保されるのだ。 珠里は周囲の状況を把握した後、ベス・エイミーを匿《かくま》いながら、持っていた携帯電話を速やかに取り出す。 緊張感とともに、コールが鳴り続けた。 そして電話が繋がった為、珠里が警戒しながら話をする。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加