ケース🔟 前世来世

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「岩倉係長。・・はい。私は無事です。今、建物内の3階にいます。・・はい。江戸川とは別行動をとっています。」 静かな闇の廊下に、小さく話す珠里の声が聞こえている。 ベスとエイミーは、傍でじっとしていた。 「・・・はい。その建物内で、容疑者の四姉妹のうち、幼い妹を二人確保しています。この子たちの人命と安全を最優先したいと思います。・・はい。・・応援隊の建物内への突入は、少し待ってください。肝心な貴志くんの安全を確保出来ていません。まだ、見つかってないんです。もし、容疑者に人質として取られていたら・・。」 通話中も、珠里は周囲に目を配り、片手には拳銃を準備している。 その頃。 2階の一室では、江戸川とジョオの攻防が続いていた。 身構えていた江戸川が、咄嗟にジョオへと突っ込んでいき、素早くその相手の腕を取ろうとする。 ジョオはそれらを、手刀の構えで次々と振り払っていき掴ませないようにしていたが、その隙をついて江戸川が、ジョオの前襟を掴んだ。 そこで投げ技に入る江戸川へ、先にジョオの膝蹴りが鋭く放たれる。 「くうっ!」 江戸川の体は、“く” の字に曲がり、膝蹴りの衝撃で苦痛に怯《ひる》んだ。 そこへ更に、ジョオの前蹴りが胸部へと突き刺さる。 江戸川は激しく蹴り飛ばされて、出入口のドアまで突き破って、廊下へと転がっていった。 「かはぁっ・・!」 満足そうな顔で、ジョオが見つめている。 江戸川は、俯せで廊下に倒れ込んだまま、すぐに起き上がれない。 ゆっくりとジョオが、室内から廊下の方へと歩み寄ってきた。 「脇腹とか片腕とか、怪我していたとしても、お前ぐらいなら殺せるヨ。」 受けたダメージにより、すぐに立ち上がれずにいる江戸川。 「じゃあ、終わりにしようか。」 そう言って、ジョオが容赦なく迫ってきた。 「終わりは、お前の方じゃないのか。」 突然、そんな声が投げかけられる。 声のした方を、江戸川とジョオが見てみると、そこにいたのは昌也と貴志だった。 身構えながら昌也が立ちはだかり、その背後を素早く駆け寄ってきて、貴志が江戸川を助け起こす。 「江戸川さん。大丈夫ですか。」 ジョオが、不機嫌そうな顔で言い放った。 「誰かと思えば、逃げてたボウヤたちじゃないか。捜す手間が省けたヨ。三人まとめて、ちょうど良かった。」 身構える昌也。 そして一瞬の間合いで、昌也とジョオは攻撃をし合う。 パンチや蹴りの攻撃は、リーチこそ長い昌也だったが、その打撃のスピードと技術は、やはりジョオには及ばなかった。
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