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ジョオのパンチを左頬に、キックを腹部にくらって、昌也は後ろへと後ずさる。
「くっ!」
「格闘技はね。そんな短期間だけで、完璧に身につくものじゃない。私とお前じゃあ、経験値が違う。」
ジョオが、睨みつけるようにして言った。
それに対して昌也は、睨み返すようにして反撃していく。
パンチと蹴りを繰り出していく昌也。
ジョオはそれを上手くかわして、上下左右にまるで幻影を相手にしているかのように、攻撃が当たらない。
それでも攻撃を止めずに、昌也はあらゆる手段を続けた。
その時、いきなり背後から貴志が蹴りを出してくる。
それもあと一歩のところで、ジョオは上手くかわして、お返しの蹴りを貴志へと放った。
たったその一撃で、蹲《うずくま》る貴志。
「ほらほら〜。素人のボウヤは、大人しくしておきなヨ〜。」
ニヤリと笑みを浮かべるジョオ。
そこで更に、昌也が立ち向かっていく。
長い手足で、必死にパンチと蹴りを繰り出していった。
それをジョオは、ヒョイとかわしたり、ガードで上手く受け止めていく。
「ハハ。何度やっても、無駄だヨ。ほらほら、段々と疲れてきたんじゃないの?」
歯を食い縛り、がむしゃらに攻撃していく昌也。
ふとした瞬間に、ジョオの鋭い回し蹴りが炸裂し、昌也の胸部を捉えた。
その攻撃に、吹っ飛んでいく昌也。
「くふっ!」
薄ら笑いを浮かべるジョオに対して、昌也も敵わないと思った矢先、フッと黒い影が駆け寄ってきた。
気がつくと、いつの間にか江戸川がジョオの懐《ふところ》まで入ってきて、その襟首と片腕を掴んでいる。
突然の事に、ジョオがハッと顔色を変えた時には時既に遅く、その体は一瞬にして宙を舞い、柔術の投げ技で地面に叩きつけられていった。
その全身に受ける激しい衝撃に、ジョオは息もできぬ程の小さな呻き声だけ発する。
「・・ぅぅ。」
そのまま気絶してしまうジョオ。
激しい戦いが終えた事に、安堵と疲労感で、その場に倒れ込む江戸川と昌也。
「ふあ〜。やった。やっと倒せた。」
その安心感も束の間、江戸川はすぐにジョオの両腕を手錠で繋いだ。
「コイツ、強すぎ。」
昌也が、本音を吐く。
「俺なんて、人生でこんなに怪我した事ないよ。」
貴志も、体の傷やアザを見せながら言った。
その様子を見ながら、江戸川が二人に告げる。
「二人とも、無事で良かった。相棒の珠里も今、この建物内でお前らを探しているし。連絡しておいた警察の応援も、続々と駆けつけている。」
貴志と昌也は、安心した顔をした。
「良かったな〜。どうなるかと思っていたよ。」
そして江戸川が、気絶したままのジョオを見ながら話す。
「コイツは恐ろしく強かったが、あの松田さんは、一人でコイツを倒したんだ。今更ながらに、松田さんの凄さが分かるよ。」
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