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第二ボタンは誰の手に?
チャンスは今日、一度きり。
勇気を出して、上田翔太に「第二ボタン、ください」って言うんだ。
高校の卒業式が無事終わり、お祝いムードで賑わう三年一組の教室。
私・川野萌は両手をぎゅっと握って決意を込めた。
二年・三年と同じクラスだった上田翔太は、仲のいい男友達だ。
野球部の元エースで、頼りがいのある男らしい性格をしている。
私はそんな翔太が好きだったけれど、友達関係が崩れるのが怖くて、ずっと言えないままだった。
二年生のときに「卒業したら、翔太の第二ボタンちょうだい」ってふざけて言ったことはあるけれど、向こうも冗談だと思って笑ってたもんなぁ。
でも…今日こそは告白する。
そう思って教室を見回したけれど、そこに翔太の姿はなかった。
「ねえ、翔太知らない?」
翔太といつも一緒にいる男子グループに聞いてみる。
「ああ、あいつ、部室じゃねぇかな?」
「用があるって言ってたぞ」
「そっか、ありがと」
私は緊張で高鳴る鼓動を感じながらも、教室を出て野球部の部室へと向かった。
校内は記念写真を撮る生徒たちで溢れていた。
人の波を抜けて、下駄箱に辿り着いたところで見知った後ろ姿を発見する。
「翔太!」
振り返った翔太は、私を認めると目を丸くした。
「あれ、萌。友達と一緒じゃなかったのか?」
「あのね、私、翔太に話があって…」
「俺に?」
私は真っすぐに翔太を見つめる。
すると、あることに気付いた。
「あれっ?」
翔太の学ランに縦に並んだボタン。
上から二番目のボタンは、すでにそこにはなかった。
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